第2話:扉は遂に開かれた
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『皆様、初めまして。私の名前はアオイドス――』
『何処から話しているのか? それは目の前の――そういう事ですよ』
その外見は明らかにアバターのソレであり、素顔もメットの影響で全く見ることができない。
その動画に出ている人物、彼は自らをアオイドスと名乗った。
どういう仕組みなのかは不明だが、動画を見てる人物に向けて語っているような――。
『過去に起きた様々なSNS炎上事件、それは全て埼玉県草加市――ここで終結してきました』
『しかし、今回は不特定多数のユーザーが相手ではない。明らかにアレなのです。皆様が良く知るようなバトル物、それと似たようなテイストです』
彼は一方的に話をし始め、他の人物のことなどお構いなしの様子だ。
だが、彼の言う事には一理ある。明らかに、草加市を襲撃しているのはアンノウンという存在だからだ。
『全てのきっかけは、些細なものに過ぎない。SNSの炎上と同じようなものですよ』
『そう、全ては――』
そこから先は収録されていないらしく、動画はここで途切れていた。
謎多き人物、彼は何者なのだろうか? もしかすると神の視点を持つのでは――そういう疑問も浮上するかもしれない。
しかし、動画として存在するのに神視点とは? それこそ『神視点の人物がすべてを操っている』というレッテル張りでは?
『AZIS(イージス)ニュースの時間です。今回は、いよいよ夏のシーズン到来という事で――』
ニュースキャスターアバターのバーチャルアイドルが、今回も所属アイドルの情報を伝えている。
夏の時期に近いという事で、水着グラビアの紹介か――と思われたが、実際は違っていた。
『まもなく開催予定のイースポーツイベントに関しての情報です』
イースポーツ、かみ砕いて説明すればコンピューターゲームをスポーツ化した物というべきか。
様々なジャンルで行われているが、特に盛り上がっているのはFPSと対戦格闘だろう。
海外では莫大な賞金が話題になっている一方、国内では様々な事情で盛り上がりに欠けている。
実際、拡張現実を利用したARゲームで同種のイベントが行われたようだが、そこまでの話題になっていない。
逆に盛り上がりすぎて炎上勢力が介入することを懸念していた、というには理由が弱いだろう。
つまり、時代が早すぎてついてこられる人物が少なかったのである。現実は非情というべきか。
事実は小説よりも……と言う位に技術レベルは上がっていても、この状態では今後のコンテンツ市場はどうなるのだろう?
特に大きなニュースもなく、今日もバーチャルドライバーのホームページとにらめっこをしているのは
炎上勢力が唐突に壊滅したと言われても、そう簡単に信用はできない。あのプレイ動画に出ていたアバターがエウロペという人物なのは判明しているが――。
「あれがストーリーモードの類と言われれば、そう信用してもおかしくはない。それに――」
エウロペの一件、アスナはそれが引っ掛かっていた。この他にも炎上勢力と交戦したらしい動画は発見している。
しかし、エウロペのように無双していたような事例は、残念ながら――確認できなかった。
だからこそ、アスナはあるものを疑う事になったのである。あのベランダで見た光景、それと重なった物を。
「バーチャルドライバーには、何かが隠されている。単純なゲームではない、別の何かが」
アスナが疑うのは、バーチャルドライバーもSNS炎上を目的として生み出されたものではないか、という事である。
過去にSNS炎上阻止のために訓練という形で生み出されたゲームもあれば、ホビーアニメなどではよくあるような『玩具で世界征服』のテイストを持つゲームもあった。
しかし、それらは全てフィクション上の存在でしかない。
前者に関してはリアルイベントも行われた記録があるが、それも正確なソースなのか疑わしいだろう。
「まずは、実際にプレイしてからではないと判断できないか」
アスナはバーチャルドライバーをプレイし、そこから真相を探ることにする。
一種のエアプレイが炎上することは、フィクションでなくても事例は山ほどあるだろう。
実際にプレイし、それに触れてから――というのはどのジャンルのコンテンツにも言えることだからだ。
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