1-3

 フレイというリアル配信者の動画、それはある騒動が一連のゲームである――という衝撃の発言の動画だった。

しかし、これが炎上している理由が瀬川せがわアスナにはピンとこない。一体、何がどうなっているのか?

そこで彼女が思い出したもの、それはWEB小説サイトにアップされていた小説である。タイトルは『不正破壊者(チートブレイカー)の我侭姫(デンドロビウム)』だ。

 ざっくりとした内容としては、主人公のデンドロビウムが不正を行うプレイヤーを倒していく、という感じの内容だったか?

不正プレイヤーの正体は色々とあったような気がしたが、その中には炎上勢力等存在もあった。

(考えすぎかな。WEB小説の内容がリアルに起きるなんて)

 実際、炎上していたのはフレイの動画だけではない。他のリアル動画投稿者の動画も一握り程度だが炎上していたのである。

フレイの方がついでだったのか、メインがフレイで他の投稿者は目的を悟られないための物か?

その後、アスナがフレイの一件もあって情報を収集していたのだが――その途中で、あるものを発見する。

内容は炎上勢力のログともいえるものであり、そこにはフレイをターゲットにするという事も書かれていた。

(次のターゲットは、バーチャルドライバー?)

 ログの内容を読み進めていくと、フレイ以外にも炎上させるターゲットが記載されていたのである。

普通はこうしたターゲットは第三者へ情報が漏れるのを防ぐため、色々と細工はするはずだろう。

しかし、アスナの見ていたログにははっきりと書かれていたのが逆に気になっていた。


  

 一息ついてからアスナはバーチャルドライバーが何なのかを調べ始める。ワードからすると、ゲームタイトルだろうか?

実際、その予想は見事に的中した。サイトを見る限りでは、拡張現実を使用したARゲームではなく、仮想現実をベースとしたVRゲームに見えなくもない。

『一連の謎の美少女、その正体はバーチャルアイドルだ。そして、アンノウンとのバトルはゲームに過ぎない』

 フレイの発言を思い出したアスナは、改めてゲーム内容を確認することにする。

確かにフレイの言う事も一理あるだろう。ストーリーとしては『地球に襲来した異星人の撃破』というのがメインのようだ。

しかし、単純に普通のゲームであれば炎上勢力が目の敵にするのはおかしな話だろう。

(そこまで注目されているようなゲームとも思えないし、どうして炎上させようと――)

 アスナはサイトの説明やゲームのルールなどを見ても、フレイの動画が炎上した事と関係があるとは思えなかった。

単純に動画投稿者であるフレイが目当てであれば、次のターゲットをバーチャルドライバーにするのはおかしいだろう。

もっとメジャーなタイトルを炎上させれば彼らとしては――という部分もあるはずだ。そうした部分を、別のWEB小説でも見覚えがある。

 そのタイトルは『ヴァーチャルレインボーファンタジー』で、様々なヒーローが登場するという部分もバーチャルドライバーと若干類似するが、まったく同じではない。

さすがに全く同じだったら、訴えられるような可能性も否定できないだろう。

「やっぱり、フレイの動画が炎上したのは有名税だったって事?」

 結論としてフレイの知名度が上昇したことに対しての有名税としての炎上、アスナは結論付けようとしていた。

その後は、せっかくなのでバーチャルドライバーのプレイ動画をいくつかチェックし、どのような作品なのかを再確認する。

 様々な有名プレイヤーの動画も発見するが、アスナとしてはこれよりも印象に残る動画があった。

有名プレイヤーの動画を再生するよりも、彼女にとってはこの動画の方が重要という事なのだろう。

サムネイルの段階で印象に残ったそれは、SNS炎上勢力を壊滅させたとする動画説明文とともにURLリンクもある。

該当URLをクリックしてもリンク先は404という事でサイトは存在しないのだが、URLアドレスにアスナは見覚えがあった。

(このアドレスは、まさか?)

 アドレスの正体、それは先ほどまでチェックしていたバーチャルドライバーを次のターゲットとしていた炎上勢力のログである。

ある意味でも晒しに近いその行為自体は褒められたものではない。しかし、大炎上直前で止めたことはユーザーにとっても歓迎する声があった。



 動画を再生したアスナは、その内容に驚くしかなかったのである。炎上勢力と思われるアバターはいかにも戦闘員な外見だが――。

「あのプレイヤー、もしかして?」

 次々とアンノウンと共に戦闘員を撃破していく姿、まるで異世界ファンタジーで無双をするような勇者を連想する。

バーチャルドライバーはアンノウンの撃破だけでクリアなのではないのか、そう思ったアスナも彼女の無双している姿には言葉が出ない。

動画の視聴者はそこまで気にしている様子はないようで、むしろこのプレイヤーのスーパーテクニックなどを評価しているようだった。

炎上勢力の晒しなどを指摘しているようなコメントが全くないのを踏まえると、そこに突っ込むべきではないのかもしれない。

(あれが、バーチャルアイドル……なのだろうか)

 西洋の女神を連想するようなアーマーを装備しているのだが、それとは別に装備しているアーマーもSF要素が強い。

これに関しては、バーチャルアバターに別のアーマーを装備しているというのが手っ取り早いだろうか?

 しかし、それとは別に彼女が使用する武器は明らかに場違いと言えるようなものだった。

彼女の持っているスピアとシールドが一体化したような武器、エンブレム部分に書かれていたソレはアスナにも見覚えがある。

(あのエンブレムは、確か大手コンビニの――)

 武器のエンブレム部分にあるのは、大手コンビニのロゴだった。どう考えても、アバターとは不釣り合いと言える物だろう。

バーチャルドライバーで使用する武器、ウェポンギアと呼ばれるものには必ずと言っていいほどにスポンサーがついている。

これによって、チートに代表されるような不正武器を一掃するというものらしい。確かに正規品にタイアップが付いていれば、ある意味でも一石二鳥なのだろう。

ゲーム的にはこれで大丈夫なのか? 逆にスポンサーというリアルに引き戻されそうな要素を入れることはイメージダウンではないのか?

しかし、このゲームが生まれた経緯を踏まえると、このスポンサーが付くという事自体が、実はビジネスチャンスと言える物だったのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る