バーチャルとリアルの境界線
アーカーシャチャンネル
第1話:大炎上の始まり、もしくはきっかけ
1-1
ふと空を見上げると、そこには空を飛ぶ美少女の姿があった。普通に裸の美少女が飛んでいるわけでは――。
話は前後するかもしれないが動画を見ている途中で、その人物は空を飛んでいたのである。
それが気になって、二階のベランダから空を見上げた瞬間、その人物の姿を目撃した。
場所が場所だけに一歩間違えれば大炎上は避けられない。そういう時代と言えば――お分かりいただけるだろうか。
『さて、行きますか』
パソコンから流れてくる音声はミュートなどにはしておらず、そのまま流れている。
その音声はベランダにいる彼女にも聞こえていた。どれ位の距離で、どのあたりの上空なのかはわからないが、直接音が聞こえるわけではない。
『アレが、アンノウンね』
声だけを聴いているため、ベランダにいる彼女にはアンノウンの事は分からないし、どれを指しているのかも把握はできない。
しかし、空を飛ぶ美少女が何かを撃墜し、その光が遠くから見えたのは確かだった。
数分前までは普通の配信を見ていたはずなのに、しばらくしてから見覚えのあるような上空が映し出され――。
この光景を目撃したのは、該当する配信を見ていた視聴者全てに言える事だった。
『あれが、噂のアンノウンなのね。日本でしか目撃例のない――』
しかし、この話題をSNS上で言及する人物が非常に少ない。これは何を意味しているのだろうか?
今回の一件は機密が含まれているのか? それとも、本当にゲームの宣伝だったのか?
全ては、若干興味本位で見ていたバーチャルアイドルの生配信がきっかけだった。
どのような話をしているかはどうでもよく、リアルの配信者とは違うバーチャルという意味の配信者が気になってのことである。
実際、そこで配信をしているのが本当にリアルなのか、バーチャルなのか――その線引きさえ曖昧になっていく。
そのような気配を、この配信から彼女は感じていた。
『ちょっと待っててね』
配信の途中で、この一言を最後に画面が瞬時に切り替わったと思ったら、草加市上空が映し出される。
更に言えば、下に映りこんでいた建物は近所のアミューズメント施設。これには、まさか――と。
(CMとは、違うよね?)
映りこんだ建物を踏まえると、彼女が行っていることは明らかに炎上行為と言われても不思議ではない。
何と、文字通りの飛行物体を撃破したのである。確かに、この近辺にも航空機が飛び交うような場面はあった。
どう考えても、この目撃している物はCMではない。実際の生配信といっても差し支えはないだろう。
(あれって、まさか?)
彼女は二階の自室から直接ベランダの方へと向かい、あの光景を目撃したのである。
先ほどまで動画を見ていた女性も、この状況を把握するには少し時間が必要だった。
その後、自室のノートパソコンから声が聞こえてきたので、もしかすると――という可能性はあっただろう。
『敵の方はすべて撃破できたみたいね』
全てが決着し、ベランダから自室へ戻ったのは生配信が終わったタイミングである。
その間、わずか五分といった具合だろうか? この長さでCMを疑うのもおかしな話だ。
仮にプロモーションだったとしても、あそこまで大規模に光が目撃されれば炎上待ったなしである。
それ位にSNS上の活動次第で炎上することも避けられない、それがSNSの宿命と言える物だったから。
その後、彼女はSNSのつぶやきサイトの動向を調べ始めていた。
残念ながら、今回の生配信に関しての情報は得られなかったのだが――別の情報を目撃することになる。
【あの動画、本当なのか?】
【分からない。しかし、事実だとすればスクープになる】
話の流れは、とある動画に関するまとめサイトの話題らしい。
一連の生配信に関しては言及されていないが、話の流れからバーチャルアイドルに関する物なのはわかった。
本当に、このサイトを見れば真相がわかるのだろうか――そう考えた瀬川(せがわ)アスナは、言及されているまとめサイトを探すことにする。
つぶやきサイトのリンクから飛べば一番早いかもしれないが、この手法のリンクは大抵がフィッシングサイトやランサムウェアといったものに利用されており、一歩間違えれば大惨事は避けられない。
実際、つぶやきサイトのハッシュタグでも『単なるバズり』目的や『炎上狙いのトラップ』というものは少なくない。
だからこそ、アスナは該当サイトを自力で探すことにしたのだ。フェイクニュースまがいのつぶやき経由よりも、信用できるソースと考えているのだろう。
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