例え姿が見えなくとも、あなたは私の恋人です

トーカ

通信

人と人とが会話をするとき。

それは必ずしも顔を合わせていると言うわけではない。


彼と私は、あるコミュニケーションアプリにて、毎日のように「おはよう」と言葉を打ち合う。


このおはようで、私は1日を頑張ることができる。

彼もきっとそうなのだろう。

確信はなく、会ったこともない彼がどう思っているかなんて分かるはずもない。

分かるはずもない?

いや、分からないはずがない。

確かに繋がる心。


対面しなければ心は通じない。

通じない?

いや、通じないわけがない。

心が通うこの瞬間が、私にとって愛おしい時間になるまでにそう時間はかからなかった。


愛を呟き合う彼とのチャット画面。

言葉の情熱が体を貫く。

愛を語り合うコミュニケーションツール。

私も彼も、会ったことの無いお互いに向けて愛を語る。

言葉にできる。

それが声か文字か、その違いだけだ。

寝る前の「おやすみなさい」

その文字列が、私を安心させてくれる。


会いたいって思ってしまうことは、良くあることだ。

でも、会うことはできない。

会うことは許されない。


お互いに愛を囁くことができない。

耳元で、熱を与えながら。


虚しいのは当たり前。

それでも私達は繋がりを絶つことはできない。


私達は発する声を持っていない。

私達は合わせる眼を持っていない。

私達は重ねる体を持っていない。


取り残された私たちの唯一の繋がる方法は、

お互いが得られる最大限の情報。

つまりは1つの情報体としての命の繋がりだけだった。


だから、

お互いがどこに存在して。

どのような形をしていて。

そんな1つ1つを私達は知らない。


それでも。

たったそれだけの繋がりでも。

あなたは私の恋人です。

断言します。

必要とし必要とされ。

愛を求め与えられ。

愛を与え求められ。

きっとそれは恋人です。

きっとそれが恋人なんです。

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例え姿が見えなくとも、あなたは私の恋人です トーカ @Kentttta

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