4:魔王高校生

「せ、設定??? なんの話だ、幼女?」

「おぬしぃ~、少しは考えよ」

「なにィ?」

「いきなり、見ず知らずの別世界から来た素っ裸の成人男性が現れたら、将来の英雄を殺しに来た未来ロボ、だと思われてしまうじゃろ?」

「――ずいぶん、ピンポイントな設定だが、まぁ、確かに不自然ではあるな……」

「そこでじゃ。あらかじめ、転生先の世界に、おぬしを馴染ませておくのじゃ」

「ほほ~う」

「そのために必要なのが、設定、じゃ。云うておくが、これも1回限りゆえ、よーく考えるのじゃぞ」

「――お、おう」


 なるほど、な。

 転生先の異世界で俺がごく自然に馴染むために、設定が必要ってわけか。

 ――ふむ。

 さて、どうするか?


 やっぱ、貴族の息子、がいいかな?

 いや、だったとしたら、国王の息子、いやいや、皇帝の第一子、とかのがいい!

 ちと待てよ?

 権力闘争とか暗殺とかの対象にされんのヤダな?

 だったら、最強の騎士とか最強の錬金術師、みたいな設定がいいか?

 ううーん、いまいち。

 そもそも、現時点でそんなに俺、強かねーし。

 いやいや、クラスが魔王なんだから、やっぱ大魔王として君臨し、世界征服を目指すってのが順当か?

 いや、ダメだ。倒されて終わりだ。滅びの美学とか、俺にはねぇーしな。


 さて、――

 ――どうしたものか……


 漫画描く時はすんなりキャラ設定とか決めちまうんだが、やっぱ自分のことになると迷うもんだな。

 主人公設定ってのが一番しっくりくるが、何せ<友情・努力・勝利>でお馴染みの出版社出身ゆえ、くっそダルい成長記録が必要になっちまうんで、そんもん、俺自身が経験したかねーしな。

 そうか!

 やっぱ、俺の得意分野のラッキースケベにすっか?

 俺に惚れ込んでる幼馴染みがおって、ちょっと正直になれない感じのヒロインがおって、次々と女の子が俺のもとにやってくる、くっそ安いハーレム設定にすっか?

 うーん……

 ラブコメじゃ、折角キャラメイクした能力、活かせねーな?


 ――あッ!


 そう云や、転生っつ~ても、本来は続くはずだった俺の人生なんだよな。

 つまり、俺の人生において、どこかやり直したい点、経験してみたい状況、ってのを考えたほうがいいかも?

 ……やり直したいトコだらけだ!!

 俺の人生、ほぼやり直したい!

 くっそー……


 そ、そうか――

 俺、高校、行ってない。

 高校入ってすぐに漫画家デビューしちまって、トントン拍子で連載つかんだから、すぐに中退したんだ。

 まあ、後で通信制入ったから学歴上は高卒だが、ほとんど学校に行ってない。

 ――俺、学校生活を送りたい!


「おい、幼女! 決めたぞ、俺の設定」

「おッ!? ずいぶん、早いな? 大丈夫か?やり直しは利かんぞ」

「大丈夫だ、問題ない」

「ふむ――で、おぬしはどんな設定にしたんじゃ?」

「聞いて驚け! 俺は――学園王に、俺はッ、なる!!!」

「――……どっかの学校の理事長になりたい、ってことか?」

「ちがわい!!!」

「なんじゃ、落ち着いて話せ」

「学園生活! 魔王である俺でも問題なく学園生活が送れる、そんな世界に転生させろ! 俺は、魔王高校生になるんだッ!」

「――魔王高校生……ワケが分からん!!!」

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