文章を書く練習

雛森 月斗

第1話 深い主題に浅い答え

 「生きている意味」を僕は知らない。トイレや風呂とか、ふとしか時に考えてみるがどうにも結論は出ず、しっかりと考えようとすると気づけばスマートフォンに手が伸びていた。


 高校三年の夏。進路希望調査票の就職の欄に丸を付けて、近場でよさげの企業の名前を入れる。進学にしないのは家の都合だった。親にも反対はなく、自分でも他人事のように感じるままに決めた就職先だった。

 将来の夢は小説家。そう考えていたのは中学生の頃の話だ。きっかけは母がもともと同人で文章を書いていたからだった。自分の考えた話を誰かに共有することが好きだった僕はその仕事に憧れを抱くようになった。

 高校生になってその考えの甘さを痛感した。テレビやTwitterで同学年の著名人を見るたびに胃の下あたりに嫌な感覚を覚える日々。努力をしていない自分の自業自得だと知っていても嫉妬を上手く抑えることは出来なかった。


 こうして文字を打ち込む指が時々止まるの事が腹立たしくて仕方がない。「どうしてうまく言葉に出来ない?」「なんで僕の話は面白くない?」なんて疑問に思ったのは今に始まったことじゃない。今に始まったことじゃないが未だに解決していない。

 僕にとっての生き甲斐は・・・・特に浮かんでは来ない。毎日憑りつかれたようにパソコンに張り付くことが生き甲斐か? 好きなソシャゲのログインを切らさないことが生き甲斐なのか? 毎週のアニメを正座で見ることを生き甲斐と呼べるか? 食べることが生き甲斐か? もはや呼吸することが生き甲斐なのでは?


 生産性のない時間を過ごすのが苦痛でこうやって文章にする。考える、そして文字を打つ。誰にも見られないかもしれない。思うままに書いた文章を受け入れてくれる人は居ないかもしれない。それでもキーボードの上で指は動くことをやめない。

 人生は短い。やりたいことを挙げれば挙げるだけで日が暮れる程にあるのに、どうしても最初の一歩を踏み出せない。ああ、布団が恋しくなってきた。


 皆さんはどうですか? あなたには「生きている意味」がありますでしょうか?


 私はただ死んでいないだけです。

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