君と僕
碧色
君と僕
僕にはとある女友達がいる。彼女とは家が近く、いつも一緒に電車登校している。女尊男卑という訳では無いが彼女の思考は女性にしか持ちえない鋭さがあると思う。そんな彼女との会話は僕の楽しみだった。今日もまた会話が始まる。
「ねえ、運命の人っていると思う?」
唐突な質問に僕は大して考えずに
「居るんじゃない?ビビっと来るものがある人とか」
と、答えた。彼女は質問を続けた。
「じゃあ、その運命の人が同性だったらどうする?」
今度は少し悩んで答えた。
「…もし付き合っても周りの目線が気になってみんなには言えないかな」
そう答えると彼女は
「……そうだよね」
と、小さく呟いた。
「私は運命の人なんて居ないと思う。もし仮に運命の人が居たとして、そんな世界のどこに居るかも分からない人より身近な仲のいい同性を好きになる方がよっぽど有り得る話だと思うんだけど」
「……それはそうだね」
「じゃあもっと同性愛者って受け入れられるべきじゃない?」
「少数派だから……かな?」
「この社会、少数派に対して厳しすぎない?私、左利きなんだけどハサミとか改札とか社会のシステムに四捨五入で切り捨てられてるように感じるよ」
彼女は遠い目をしながら嘆く。僕はすぐさま
「僕がマイノリティに優しい世界に作り替えるよ!」
と、励ますように言った。彼女はクスクスと笑って
「頼もしいなぁ」
と言った。
「絶対思ってないでしょ!」
けらけらと2人で笑いあった。
彼女を笑顔にしたい。社会とは違って僕はその気持ちが全てだった。
「僕達の関係も、いつか堂々と言えるかな」
「私達で言えるようにするんだよ」
女性専用車両の中、2人でこっそり手を繋いだ。
君と僕 碧色 @chan828
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