第24話 森白雪

「龍之介さん、こんにちは」

「? あ、こんにちは。おめでとう」

「ありがとうございます。今、ちょっと時間いいですか?」

「あぁ、いいけど、何?」

「あの、アリスちゃん、なんですけど」

「アリス? うん」

「アリスちゃん、なんか、都知事賞で怒ってたみたいなこと、母から聞いたんですけど、本当ですか?」

「あー、うん。本当だね」


「それって、わたしと同じ賞だからですかね?」


「あーー、いや、こころに負けてるから、だね、多分」

「こころさんに、ですか?」

「うん」

「…………あ、そういうことか」

「…………?」

「あー、なるほど、あれ素なんですね。あぁ、なるほどなぁ」

「……どしたの?」

「いや、……あー、ちょっと、悔しいなぁって」

「悔しい?」

「はい。あの、あんまりいい話じゃないんですけど」

「うん」

「母から、国際絵画コンクールでアリスちゃんが負けて凹んでるって聞いたんですけど、そのときちょっと嬉しかったんですよ」

「ん? ああ、うん」

「あ、私見てくれたんだなって、そんときは思ったんですよね」

「うん」

「夏休みくらいから、アリスちゃん、油彩、増えたじゃないですか」

「うん」

「なんか、私の土俵に来てくれたんだなって、意識してくれてるんだなーって思って、めっちゃテンション上がったんですよ」

「あぁー」

「それで、同じ油彩だから、一緒になる機会も増えて。私ですね、アリスちゃんに勝手に挑んで、一喜一憂してたんですよ」

「…………」

「全部、勘違いでしたね」

「………………」

「私のことなんか、見てもなかった」

「……………………」

「さっき挨拶するまで、っていうか壇上まで、私が都知事賞だってこと知らなかったんですよ?」

「……なんか、ごめんね」

「いや、良いんです。悔しいけど、私の力不足だから」

「あーでも、白雪ちゃんの中学生で都知事賞も十分凄いからね」

「……お世辞じゃないってのは判ってますけど、それとこれとは別ですから」

「…………そ。そっすよね」

「いつか、絶対、振り向かせます」

「……僕が言うことでもないけど、まぁお手柔らかに」

「はい」

「あと、たまに遊びにきてやってよ。あいつ、友達少ないからさ」

「それは……はい」

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