第24話 神威心闘流の秘密(笑)
第24話 神威心闘流の秘密(笑)
「皆さんこんにちは、実況のリウです」
「いつの間にこんなに腑抜けやがったーーーっ」
「何を言っておいでだ。魔力なしが無能なのは事実ではありませんかーーーっ」
「現在我々の目の前では、じいちゃんと宮廷魔導師の子弟バトルが繰り広げられています。
宮廷魔導師が杖を長棍のようにふりまわしてじいちゃんを攻撃し、一方、じいちゃんは近くにあったワインボトルを近くの柱に叩きつけ、ギザギザに割れたそれを武器にして宮廷魔導師におそいかかっています。
武器のチョイスが実にヤンキーらしいです」
じいちゃんの主張は人間の貴賤は魔力ではない。ということであり。
一方宮廷魔導師の主張は、魔法こそが最も偉大な力であり、魔法こそが世界を救うのだ。ということのようです。
これが翻って、『魔法が使えない』=『無能』という構図が成立するようです。魔法が弱いに比例して無能というのが結論の様です。
「うーん、何かいやなことでもあったのかしら~」
お隣にいる解説のフウカさんです。
「確かにクエル先輩は昔から魔法大好きで~、魔法が至上な人ではあったんだけど~、あんなにひとをみくだしたりはしなかったよね~」
「昔って、どのぐらい前ですか?」
「じゅう…5年ぐらい?」
「ここんとこ忙しいって言って、こっちに帰ってきたりはしてなかったのよね」
人間の主義主張が変遷するには十分な時間だな。
でも魔法が一番って言ってる割には、宮廷魔術師のおっちゃんも筋肉とか格闘術とか結構すごいよね。
「まあ、魔法は筋肉が我が一門の伝統だからね~」
それは果たして正しい思想なのだろうか?
ダメじゃね?
「でもリウたん、魔法使いだって体力がなければだめなのよ? だから体は鍛えないと」
そうだった。フウカ姉ちゃんも魔法使いのくせして格闘戦得意だった。
うちの父さんも無茶苦茶格闘戦能力高いくせに加護魔法とか必殺技とか使ってたな。
「となると、やっぱり魔法も筋肉なのだろうか?」
「あー、リウたんの常識が揺らいでる~」
変な所を楽しまないで欲しい。
「でも、魔法使いって言うと勉強ばっかりしているようなイメージがあったんだよね。フゼット姉もあまり武闘派じゃないし」
「あー、そうだよね、フゼットは正統派の魔法使いって感じがあるよね。あの娘は運動苦手だから…でも体力作りは徹底的にやらされてるんだよ。一応『大賢者の系譜』だから」
「大賢者って人がどんな人だったのかものすごく気になるよ」
ただ、話を聞くとやっぱり魔法使いっていうのはひょろっとした人が多いんだそうだ。
やっぱり研究に打ち込むようなところがあるからね、体作りは後回しみたいなところがあってね。
魔法使いは運動は苦手。というのが一般的らしい。
「…どゆこと?」
「つまり
一応マシスさまが大医王なんてクラスを持っていることから分かると思うけど、本当に専門は回復魔法、医療魔法なのよ。
でもマシスさまって現在となっては数少ない大賢者のお弟子さんで、高弟で、大賢者の技術を受けついでいるのはマシスさまの他は、もう二人ぐらいしかいないのよね。
しかも行方が分からないし。
なので大賢者様の技術の継承と研究をマシスさまが一人で担うような形になっちゃって…
その意味でもリウたんには期待が集まっているのよ。大賢者の『黒の書』を再現できているのってリウたんぐらいだしね~」
うおおおっ、そんな話だったのかーーーーっ。
知らんかった。
ちなみに黒の書というのは大賢者が残した例の本だね。『極秘の秘伝書』みたいな意味で黒の書というみたい。間違っても黒歴史の書ではないと思う。
たぶん。
《いいや、怪しいですよー、父様が概念を持ち込んだ可能性もあるですよー。リウ太の前にも転生者はいだですよー。失敗したですけど》
まあ、確かに、僕の作った最強戦車とかは、黒歴史だよね、
いつの時代も男の子は黒歴史を抱えて生きていくのだ。
なんて
結局師弟対決は引き分けで終わったよ。
二人とも本気じゃなかったみたいだしね。
喧嘩といっても武器でけん制し合いながらの話し合いみたいだったし。迷惑だけど…
◇・◇・◇・◇
「まあ、確かによ、強力な魔獣の討伐となると魔法がかなめになるのは当然なんだぜ。
それでよ、宮廷魔術師なんてのは、まあ、大概が魔法バカ。魔法至上主義みたいなのが多いのさ。
人格者もいるんだが、まっとうな良識と高度な魔法技術を両立するのは大変だからよ。どうしてもな…」
つまり偏った思想の持ち主が多くなって、特定分野の専門家が束になると思考が暴走するってのはままあることで、どうも、そんな環境で暮らしているうちにクエルさんは魔法を使えない、あるいは下手な人間を見下すようになったらしい。
と爺ちゃんは考えている。
たださすがに爺ちゃんの弟子だけあって、『無能は死ね』みたいな思想ではなく、『無能は邪魔にならないようにおとなしく
「いい人だか悪い人だかわからない感じ?」
「まあ、クエル先輩らしいっちゃらしいんですけどね」
爺ちゃんとどつき合いができるような人だからね。結構みんなに好かれてはいるみたいだね。
悪い人ではないんだろう。
そんなときに『戻りました』といって爺ちゃんのお弟子の一人が戻ってきた。
クエルさんの所に行っていたのだ。
なにしにって、クエルさんの用件を聞きに。
クエルさん、用事も言わずに喧嘩だけして帰っちゃったから。(笑)
「全くしようのないやつだぜ」
二人の主張は結局平行線だった。
じいちゃんは人間の才能は多様性だと考えているみたい。
向き不向きがあって、適材適所があれば価値のある仕事ができる。という考え方。
もちろんどうしようもない人というのはいる。それは分かっている。
でも何か画一的な判断基準で人の優劣を判断するのは間違いだとじいちゃんは言う。
たいしてクエルさんは、『魔法が使えない』=『劣等種』だと考えている。
「魔法の優劣がすべてである環境。
魔法が使えない人間がほとんど役に立たない環境で、長いこと過ごしていたからああいう価値観が染みついちまったんだろうな…
もともとあいつは真面目で、俺たちみたいなアウトロー気質はあまり持ってなかったからよ。
つまり宮廷魔術師どもの環境が良くねえって話だ」
ああ、うん。まあ、そういうことなんだろうね。
そしてクエルさんの話だけど、やっぱり王都での動きを知らせるものだった。
まず、デアネィラちゃんのことだけど、デアネィラちゃんは王宮側で預かることになったらしい。
竜爺が後見人になり、準王族待遇で王級で暮らすことになるみたい。
これに関しては竜爺からデアネィラちゃんの生活環境を整えるために爺ちゃんに人材支援をお願いしたい旨を記した手紙が別に添えられていた。
ボディガードとか教育係とかをうちのじいちゃんと竜爺で揃えようっていう話だね。
この二人ならきっといい環境を用意できると思うよ。
フェネルさんはとりあえずナンチャラ公爵と別居するらしい。
そんでやっぱり王宮暮らしになるらしい。
「お母さんだから?」
「いや、あいつももともとが王女だからよ、あんまり母親らしいことなんぞできやしねえだろう。
そういうことを全く知らずに育ってっからな。
超箱入りなのよ。
逆に言えば、ふわふわ社交してるばかりで、特に公爵家で仕事とかあるわけでもねぇから、王宮に戻しても大勢に影響はねえって事だろう。
それに、がさ入れの相手の所に娘がいたんじゃ、国王だってやりづらいだろうしな」
ふむ、そういうものですか。
「で、本題がこっちだな。
勇者の素行不良を理由に、リュメルクローテ公爵家にはペナルティーと試練が課せられたようだぜ。連絡の本体はこっちのことみたいだな。
なるほどな…こうつながるのか…」
手紙を読んだじいちゃんは地図を持ってこいと叫んだ。
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偶にですが厚かましくお願い。
いつもリウ太の話を読んでいただきありがとうございます。
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作者の情熱が燃え上がります。
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