第9話 おっふろ~おっ風呂~♪

第9話 おっふろ~おっ風呂~♪



「あれ~、言ってなかったかな~?」


 なんかアヤシイ。


「まあ、いいっていいって、お風呂行こ」


 目の前に痴女がいる気がする。


《確かに目つきが怪しいですよ~》


「おふろどこ? 僕一人で入れるよ」


 ええ、本当に一人で大丈夫ですよ。 任せてください。

 もしくは後回しにしてください。


「えー、ダメよ、ここの御風呂すごいのよ、大浴場っていうの」


「え?」


 大欲情…じゃなかった、大浴場。

 なんて魅惑的な。この世界ってお風呂あんまり入れないからね。まあ、入れないのが当たり前のころは気にしてなかったんだけど、お母ちゃんが父さんと再婚してから家にお風呂ついたんだよね。

 そして入れるとなれば元日本人の血が騒いじゃうわけさ。なんてったって、朝から風呂に入って酒飲んで身代を潰すのが日本人だからさあ。


《それはものすごい偏見だと思うですよー》


 冗談だよ。

 でも、最近お風呂に入るようになって、こう、お風呂がね、うん、温泉とか、大浴場とか、なんかよばれているような気がするヨ。

 ん? あれ? なんか揺れてる?


《考え事をしているうちにフウカにさらわれたですよー。もうすぐお風呂ですよー》


 うーん、御風呂か、仕方ない、付き合ってあげよう。


◇・◇・◇・◇


「うっわ―――――っ、すごい!、岩風呂だ。ジャングル風呂だー」


 でかい、広い、ほぼプールだ。

 それ突げ…いや、まて、かけ湯が先だ。


 桶でお湯を組むのももどかしいから操魔でお湯をくみ上げてどっばーと被った。

 そしてジャンプ。

 ドボン!


《きゃっほ―ですよー》


 しーぽんもジャンプ。

 びたん。

 腹打ち。

 ぷかぷか。


 しーぽんのサイズでこれってありか?


《伝統ですよー》


 多分引きこもり神様の所でギャグマンガでも読んだんだろう。タイトルが気になります。


 まあいいや、腰を下ろして…ブクブクブクブク…


「身長が足りない!」


 座ると口がお湯に沈む!


「もうしょうがないなー」


 そんなことを言いながらフウカ姉ちゃんがやって来た。

 お湯は太ももあたりだな。勢いよくかき分けながら近づいてくる。


 当然、三角地帯はお湯の外なわけで、しかも隠すとか全然してない。

 まあ、女の人の場合立ってると正面からは見えないんだけどね。


 でも期待している男どものために少し解説しよう。


 フウカ姉ちゃんはストレートロングの紺色の髪をタオルでひっつめている。かなりの美女だ。

 特筆すべきはスタイルの良さだろうか。

 スリムで女性らしいボディラインをしている。鍛えているせいか余計な脂肪がないんだよね。

 でも女性らしい脂肪はちゃんとついていて、はっきり言って巨乳だ。歩くと形のいいオッパイがゆっさゆっさと揺れているのだ。

 でも大きすぎたりはしない。かなり素敵なおっぱいではないだろうか。

 各々自分の理想とする大きなおっばいを思い浮かべてほしいな。


 あと太ももとかお尻とかも歩くとプルン。プルンと揺れている。

 姉ちゃんをモデルに裸婦像とか作ったら、芸術的に素晴らしいものができるのではないだろうか。


 その姉ちゃんはお湯の中で正座すると僕を膝の上に引き取った。


「あっ、ちょうどいい」


「うん、いい湯よねー」


 しばしほへーとする。

 本当に子どもだったらうごうご動き出すところだけど、僕は僕だからね、見事なつくりのジャングル風呂を眺めて落ち着くのだ。

 基本は岩風呂だね。

 洗い場も岩とか石を敷き詰めて固めてある。湯船もそう。大きさはかなりのものだよ。僕が通された部屋より大きいね。

 一番奥にでっかい岩があって、その上からお湯がちょろちょろと流れて小さな滝を作っている。

 恐ろしいことに其処に生えている木や草は全部本物だ。


「あれ? なんか薬草っぽいのも」


「リウたん偉い。そうだよ、こういった環境でしか成育しない薬草も栽培してるんだよね。

 ちなみにこのお風呂は大医王様とか偉い人が使う家族風呂です」


 一般の大浴場――弟子用もある――に薬草とか植えるとなんか根こそぎとられてしまうらしい。

 お前ら自重しろと言いたい。

 マナーの問題だぞ。


 そしてこのお風呂はそう言った草花の薬効成分が溶け出しているのでいわゆる薬草風呂だったりする。

 そして僕の見る限り魔素もいい感じで溶け込んでいる。


 つまり。


「とろけるーーーーーーっ」


 すごくいい感じ。

 生まれて初めての温泉(と言ってもいいのではないだろうか)である。


 僕は決心した。

 村に帰ったら絶対すごいお風呂を作る。そう、僕のこの力はそのために与えられたものなのだ。


「ものすごく用途が限定された超能力だね~」


《ですよー》


 いいのだ、温泉は正義だ。

 Myエンジェル・ステフを入れてあげたい。

 あの子が喜んでお風呂で遊ぶさまを見てみたい。いや、絶対だ。


「さあ、リウたん、洗うよー」


 ザバッと持ち上げられました。

 荷物です荷物。


 水道の前に運ばれて石鹸を塗りたくられる。

 けひゃひゃひゃひゃ、くすぐったい。やめれ。


 ここでいくつか訂正をしよう。

 フウカ姉ちゃん。

 普段痴女とか言ってるけど、結構良識人。言動があれだけど余計ないたずらとかはしない人、ちゃんと洗ってくれる。いいお姉ちゃんなんだよね。

 言動が無駄にエロいだけで。


 暇なので僕はしーぽんを洗おう。

 しーぽんは普通の人には見えないんだけど、僕が妖精を連れているのはみんな割と知っているので怪奇現象もスルーしてくれる。


「そこ妖精いるの?」


「いるよ」


 普通の人には見えない、触れないしーぽんだけど、僕には触れます。

 そしてしーぽんは着ぐるみのまま風呂に入ってます。

 時々別な着ぐるみを着ているから着替えはできるはずなんだけど、脱いだところは見たことがない。

 ちなみに今着ているのはベースの羊着ぐるみだ。

 泡でいっぱい。

 

《やめるですよー、えろいですよー》


 何がじゃ!


「うーん、泡の塊が見えるんだけど、その下には何もないのよね~、不思議な光景だわ~」


 ああ、そう見えるのか、確かに怪奇現象だ。

 そしてうえからお湯がどばーーーーーっ。

 泡がなくなるとしーぽんは見えなくなりました。他の人には。


 そして僕も頭からピカピカ。

 鏡の中に美少年が映っているのだ。


(うん、こうしてみるとなかなかいい男だ)


 自画自賛してみる。

 以前は鏡なんか見る機会がなかったけど、父さんがいろいろ買ってくるから僕の暮らしはちょっと豊かになってるんだ。

 映りのいい鏡なんかもあって、それで自分の顔とか初めて見た。


 でも、あまりおかあちゃんには似てないな。父親似かな?


「リウたんの髪の毛はきれいな銀だよね、確かにピオニーとは違うけど、でも瞳はお母さんと同じヘーゼルだね~」


 なるほど、こういう色をヘーゼルというのか…

 顔を近づけるとしげしげとみる。

 髪の毛に関しては銀というか灰色じゃないかな? 白に近い灰色。光沢があるから銀に見えなくもないけど…

 まあ、ずっと短髪(もっと言うと丸刈りに近い)だったから今まで見る機会はなかったんだけどね。

 でも今は少し伸ばしている。最近周りがおしゃれを気にしだしていろいろ指図してくるんだよね。


 でもお母ちゃんの髪の毛は…?


「ピオニーの髪の毛は亜麻色っていうのよ~」


「なるほど、あれが亜麻色なのかー」


 名前は知っていたけど、どんな色かは全く知らなかったよ。

 というか自分の髪の毛を気にせずにおかあちゃんの髪の毛見てたからなんとなく自分もそんなイメージだったんだよね。


「よーし、きれいなった。じゃあ私を洗ってもらえるかな?」


「おー」


 まあ、背中を流すぐらいどうということはない。

 前は起伏が多すぎるから自分でやってね。


 そんなわけで位置を入れ替えようと立ち上がったんだ。

 そしたら…


 バーーーンッ。


「よう、ここにマシスの新しい弟子がいるって聞いてきたぜ。

 まずは裸の付き合い…だ?」


 勢いよくドアを開けて年配の男の人が入ってきた。

 見たことない人だな。


 そのおっちゃんはこっちを見て固まった。


 位置関係的には立ち上がって振り向いた僕がいて、僕の方を向いて前かがみなフウカ姉がいて、痴漢のおっちゃんがいる。

 痴漢かどうかわからないって? まあ、痴漢でいいよ。位置関係が完全にアウトだから。


 そしてフウカ姉ちゃんがギギギと動き出して、大きく振りかぶった。

 そして投げた。風呂桶を。

 うなりを上げて飛んだ風呂桶はおっちゃんの顔を直撃。

 おっちゃんが勢いよく吹っ飛んで、風呂桶もタガが外れて思いきりばらけた。

 これはあれだ、ボーリングのストライクな感じ。


 そしておっちゃんは全裸だった。

 言動から俺と風呂に入ろうと突撃してきたんだな。


 ひっくり返ったおっちゃんはパオーンだった。


「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」


 フウカ姉ちゃんの悲鳴が響き渡った。

 お風呂だからね、響くんだ。


□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 オネガイ。

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