第0話 プロローグ No.2

冬休みが始まって3日…


12月29日


僕はオヤジに連れられ、長野県の南アルプスを訪れている。ここにくるのは15回目で冬修行の修行場なのです。

今日から1月1日まで山籠りをするという気違い修行だ。



「1日になったら山を降りてここのキャンプ場まで来い。わかったか?食料は自分で調達しろ、返事は!!」


「わかったよ」


「なら早よ行け、」


雪の積もった山を登るのは至難の技だ。

こんなところを何もなしで行けというのは死ねと言っているようなもんなのに…


流石に携帯は持たせてくれたが…そういえば圏外だし使えない。何考えてるんだあの脳筋は、


仕方ないし、頂上を目指すか…













バカでした、私はバカでした、

頂上きたら川もないし動物もいないじゃん…

スマホあったって何も意味ないんだけどな


♪♪〜 ♪♪〜


と思ったら携帯の着信音が山頂に響き出した。あれここって圏外のはず…あ、山頂だから電波が入るのか、


スマホの画面には《聖奈》と表示されている。


♪♪〜♪♪〜♪♪〜 ピッ!



「はい、もしもし」

『あ!出てくれた、諸刃大丈夫?』

「寒くて凍え死にそうだよ。」


『え!?そ、そんなぁ!!夕菜さん夕菜さん!諸刃が!』

「ん?聖奈今どこにいるの?もしかしてうち?」

『うん、夕菜さんに会って家に招待されたの…それより諸刃は!』


「ゴメン、そんなに今は大丈夫」


『…………』


「?   聖奈?」


『バカ!こっちがどんだけ心配してるのかわからないの!?』


「ほ、ほんとにゴメン…」

『本当だよ!なんでもっと…ん?夕菜さん?』


ガタッ…、


『あ,もーちゃん?あんまり聖奈ちゃんを心配させちゃダメよ?』


「…母さん…聖奈の前でもーちゃんとか辞めてくれよ…」


『あ,ゴメンね、もーちゃん… 帰ってくるのは1日でしょ?おいしいおせち料理用意して待ってるからね〜』


「あ、うん…」

母さんと話してると調子が狂っちゃうんだよなぁ…


『わ、私も諸刃が帰ってくるの待ってるからね?』


「ん、わかったよ」

『じゃあ切るね』


プツッ…



はぁ…

「お腹空いてきたし、ちょっと下って魚でも取ってくるか」


リュックからビニール袋とロープ・ナイフ・LEDライトを持ってひとまず山頂を後にした。リュックは邪魔になるからほっておこう。




雪をかき分けながら進むこと1時間ちょっとだろうか?少し生茂った針葉樹林に足を踏み入れた。

ちょっと小さいが水の流れる音が聞こえてくる。もうちょっとか、




とうとう川へ到達。だいぶタイムロスだなぁ…まぁ、魚取りますか、腰に巻きつけていたロープを網目上に編み上げ両橋に木の枝をくくりつけた。

これで簡易のタモの完成だ。これでサケをすくえば…


ん?


今何か聞こえたような…




……グウゥウゥゥ…


やばい、これは熊ちゃんだ。

ツキノワグマかな?1匹ならなんとか…


おいおい…これはヤバイ!!

早く電話を…あ、 置いてきてしまった…


僕の目線の先には立ったら3メートルくらいあるようなどでかい親熊と小熊が2匹、

こっちをガン見している。

よし、取り敢えず魚は取らなくてもいいから急いで戻らないとな、


急いでロープをしまい、山頂への帰路に立とうと後ろを向いた…



グルォォォォオオオオオオオ!!!!!




あ、あぁ…




ザンッ! グチッ…グチャッ… ブチッブチッ… ブシャャャャ〜





あれ、動かない…早く逃げないと…

ん?熱い…熱い!あああああがががあ!!!!!?

いだい!!なんで!なんでいつも僕は!


助けを呼びたくても声が出ない!

なんでなんで…




「……ヒューー……ヒューー…」


息もしにくい……



頭も…回らない……



なんで……なんで!!












………あぁ…もう……無理だよ……




…なんで……僕だけが……誰か…誰か…




…………助けて…………!







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