お嬢様から今後の話しを聞く
レナリアの自室へ案内された三人は、促されるままに椅子へ掛けることになった。両親として来ているはずの二人は当たり前のように立って控えているが、レナリアはまったく気にした様子がない。
(この二人の立場をわかってるみたい。てことは、今世もなにか物語があるのね)
ミシェイルは前世の物語は知っていたが今世について原作があるかどうかなにもしらない。ただ、自身がめちゃくちゃヒロインっぽいと感じているくらいだ。レナリアという存在を知ってやっぱり予想通りだったことがわかった。
「この度はこちらの指示不足でみなさんには大変申し訳ないことをしました」
椅子の上で頭を下げる小さな女の子を見て、切ない気持ちになるミシェイル。
(この子、いくら大人の意識があるからってこの家で安心して暮らしているのかしら)
自分の生家である公爵家は両親も使用人もみないい人たちで、信用できているからこそある程度心にゆとりをもってあのどうしようもない王太子たちに対応することができたのだ。
(心に余裕がなさそうに見えるわ)
レナリアの様子をミシェイルは冷静に観察した。
「大丈夫ですよ、お嬢様」
「いえ、統制がとれておらずお恥ずかしいところを」
統制なんて5歳の子供がすることではないのだが、この屋敷ではレナリアが中心になって動いているのだろうか。
「私たちはここで何をしたらいいのですか?」
「ご両親のお二人はミシェイルさんについていてもらえば。ミシェイルさんは私の専属となっていただくために生活をともにしてもらいます」
なるほど、とミシェイルは頷いた。ミシェイルを敵にしないように日常を配慮し、いつか裏切られたり断罪されたりしてもミシェイルのことを大事にしていたと言うためだろう。
(でも私がもし頭のおかしなヒロインちゃんだったらどうするつもりかしら。私の前世はヒロインがどうしようもない女だったせいで断罪を防ぐことができなかったわけだけど)
ここで軽くジャブでも、とミシェイルは何もわからないように首をかしげる。
「そこまでしていただかなくても……私たちが嫌な人間だったらどうするんです?」
「美味しい野菜を育てるために一生懸命畑仕事をされていたのでしょう?嫌な人間にできるはずないわ」
レナリアは当然のように微笑むがそんな価値観を公爵令嬢がもっているなずがないというのは置いておいて、それで少しは信用されているのかとミシェイルは納得した。
「みなさんの部屋は用意していますので、本日からそちらをお使いください。ご家族で過ごせるように部屋は同室にしていますが、不都合があればおっしゃってくだされば別に用意します」
いたれりつくせり、レナリアはこちらを恐ろしいほど配慮していい、使用人を呼び出してミシェイルたちを案内させた。「くれぐれもお客様として対応し失礼のないように」と厳しく伝え、それが効いたのかそれとも玄関にいた使用人とは考えが違うのか、丁寧にミシェイルたちを部屋へ案内した。
パタンと扉が閉まり、はあ、とため息をついたミシェイルは近くの椅子に座ると二人に声をかけた。
「これからわたしがどういう者か話すわ」
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