第12話 美少女たちと海レジャー
昼食を終えた俺らは、当初の予定通り、海に来ていた。
ちなみに、食料班は村班と一緒に、必要な資材の調達に向かっている。
海に来ているの今回の海班は。
俺こと朝倉恭平(あさくら・きょうへい)。
塩や釣り具制作担当、神原伊舞(かんばら・いぶ)。
戦闘要員、竜宮院乙姫(りゅうぐういん・おとひめ)。
念力による漁獲要員、舞薗茉莉(まいぞの・まつり)。
マップによる道案内担当、双子妹の平和島和香(へいわじま・のどか)。
魚の誘導担当、新妻心愛(にいづま・ここあ)。
魚に毒がないかの鑑定担当、財前守里(ざいぜん・まもり)。
心愛のバストに釣られた山田本三郎(やまだもと・さぶろう)。
の、八人だ。
木製の手漕ぎボート四艘に、二人ずつ乗り込んで、俺らは沖で釣りや投網の準備に勤しむ。
ボートや釣り竿、投網は、森の木から伊舞が作ってくれた。
「じゃあみんな、ここから半径一キロ以内の魚を集めるね」
「頼んだわよ心愛!」
「心愛ちゃん! 俺が君のために大物を釣ってやるぜ! その代わり、今夜は俺を君の部屋に!」
「心愛、バカは無視していいわよ。魚なら茉莉が釣ってくれるから」
「じゃあ今夜はココアちゃんのおっぱい枕で眠れるっすね。マツリ頑張るっす♪」
「もう、茉莉ちゃん、男の子もいるんだからそういうこと言わないでよ」
「ココアちゃん顔が赤いっす。マジでカワイイっす大好きっす♪」
「あんっ、さわっちゃだめ。赤ちゃんじゃないんだよ」
「茉莉さん、貴女は漁業の要なので、真面目にやってください」
「たっはー、マモリちゃんに怒られたっす。クール美少女に怒られるのマジ萌えるっす」
「胸枕がご希望なら、私の胸をご提供します。心愛さんほどではありませんが、枕にするには十分かと」
「うぉおおおおおおおおお! マツリの中のコスモが燃えるっすぅうううう!」
茉莉の茶髪が、上昇気流の直撃を受けたように噴き上がった。
左右のツーサイドアップも、バタバタと暴れている。
まるでスーパーサイヤ●人だ。
もちろん、そんなわけもなく、彼女の念力で持ち上げているだけだろう。
逆に、三郎はヤム●チャポーズで横たわり、うずくまっている。
「ぐっ、お、俺と茉莉の何が違うんだ……」
「性別?」
「身もふたもないことを言うな!」
「いいから網投げようぜ」
船の下に魚影を確認してから、俺は投網を手にした。
◆
30分後。
案の定、俺らの漁は、まるで上手くいかなかった。
伊舞たちは一匹も釣れないし、俺と三郎の網も、魚影めがけて投げているのに、五匹しか捕まらない。
俺らの投げ方が悪いんだろう。
投網を投げても、放射状に広がらないのだ。
網の面積が狭ければ、かかる魚も少ない。当然だ。
「おい乙姫」
「乙姫のくせに魚に無視されるなよ、とかいう苦情は燃やすわよ?」
三郎は黙った。
俺は苦笑した。
「まぁ、初日はこんなもんか。これは、茉莉大先生にお任せだな」
「ぐっ、魚が獲れないっす」
俺が振り返るや否や、今回のキーパーソンが膝を屈していた。
茉莉と心愛の乗る船には、魚が10匹程度しかいなかった。
「茉莉ちゃん、元気出して」
茉莉の頭を優しくなでて慰める心愛は、まるでお姉さんのようだった。
スマホのカメラを回したくなるような光景だけど、そんなことをしている場合じゃない。
「獲れないってなんでだよ?」
二人の船に呼びかけると、茉莉はしょんぼりと顔を上げた。
「いやぁ、マツリの念力って、使い方が二種類あるんすよ。ひとつは、第二第三の腕を伸ばして、対象をつかむイメージで、けど魚は動き回るからつかみにくくて」
「わたしの能力が中途半端でごめんね。わたし、動物を集めるだけで意のままに操れるわけじゃないから。群れの密度も少ないし……」
「ココアちゃんは悪くないっすよ。マツリの念力操作が下手なのが悪いんす。で、もう一つは空間そのものを指定して広範囲にふん捕まえるイメージなんすけど、相手は水中っすよね? 海水も巻き込むから、重すぎて持ち上がらないんすよ。持ち上げられる程度に範囲を狭めると、魚の量も減るし、それに」
百聞は一見に如かず、とばかりに、茉莉は海水を持ち上げた。
海水面から、二メートル四方の箱型にくりぬかれた海水が、魚ごと宙に浮いた。
中には、魚が三匹ほどいる。
「これ、どこに下ろせばいいんすか? 海水ごと船に下ろしたら、沈むっすよ?」
茉莉は肩も眉もげんなりと落として、への字口になった。
らしくない表情に、俺もちょっと口角を下げた。
――それにしても、誤算だな。てっきり、海中から魚だけをぽんぽん引き揚げられるもんだと思っていたのに。
「あ、じゃあこの網を海上で広げて、その上に落とせば魚だけ残るんじゃないか?」
「ワオ♪ キョウヘイちゃん冴えてるっす♪」
「いや、広げた網をそのまま海中に落としたほうがいいんじゃないかな?」
「ココアちゃん天才っす! おっぱい揉ませて欲しいっす!」
「え、それは関係ない、ひゃうん。だめだよ茉莉ちゃん、みんな見てる」
「茉莉、後で美容にいい水素水あげるからやめてやれ」
「キョウヘイちゃんそんなの作れるっすか!?」
「俺の能力は水素と酸素の化合物のH2Oを作ることだからな。水素が溶けた状態の水は作れるぞ」
「でもいいんすか? これ以上マツリが美人になったらキョウヘイちゃんの若さ故の衝動が暴走すること確定っすよ?」
いたずらっぽく笑う茉莉に、俺はぶっちょづらを返した。
「そういう否定しても肯定しても俺の立場が悪くなる質問は禁止だ。ほれ、投網」
「あん、キョウヘイちゃん連れないっす♪」
「あの、そろそろ胸揉むのやめてくれないかな?」
「ちっ、あと30秒はいけると思ったのに」
「いけませんっ」
ちょっと語気を強めながら、心愛は茉莉の手を突き離した。
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