第25話 闇の深さを知る人よ。
「さて、とりあえず
この部屋から去るタイミングを逃した墨谷先輩は、蜜がどこからか持ってきた縄に特に抵抗することなくそのまま縛られ、大人しく座っていた。
チラッと墨谷先輩の方を見て、安全だと確認できると、蜜はいかにも泣きそうな表情で勢いよく俺の元へと駆け寄る。
「お兄ちゃん大丈夫!?怪我してない!?変な術とか掛けられてない!?」
「蜜さん、さっきと様子違いすぎない!?」
墨谷先輩に向けていた冷たい目や表情はどこへやらといった具合に、蜜が様相を変えたのだ。
心配されることに悪い気はしなかったが、あまりにも感情の起伏が激しかったため心配になった。
が、蜜にとっては些細なことだったようで
「そんなことはどうでもいいの!無事なの!?」
「それ俺が蜜に聞きたいよ。蜜こそ無事なのかよ」
“そんなこと”と
が、俺が蜜のことを心配していたことは伝わったのか
「私は……多分大丈夫」
手を胸元に当てなんとも言えない表情で、俺を見つめながら蜜は答えた。
「多分って……本当に大丈夫なのかよ!」
妹が大丈夫とは言い難い表情をしているのだから、兄としては心配で心配でたまらなかった。
が、さっきまで大人しくしていた墨谷先輩が口を挟む。
「ふふふ、そうそう。本当に大丈夫なのかなぁ?うふふふっ」
「ごめん、ちょっと墨谷先輩黙らせてくる」
どうやら何か気に触ったことがあったのだろう、蜜は殺気を放ちながら墨谷先輩の方へと向かおうとする。
その蜜の足に俺はしがみつく。
「待て待て落ち着け!蜜が大丈夫って言うなら俺は信じるから!」
俺の部屋でこれ以上トラブルを起こして欲しくなかったのもそうだが、これで蜜にさらに害が及ぶのでは無いか、そう考えると俺はいてもたってもいられず、気づいたら蜜を、必死に止めていた。
やがて俺の意図が通じたのか
「お兄ちゃんが信じてくれるなら……いいや」
蜜はさっきを引っ込めてくれた。
「踏みとどまってくれてよかったよ」
「それでお兄ちゃんは平気なの?」
再び心配そうに俺を見つめる蜜。
こういう時は可愛いのになぁ……。
と、先程までの墨谷先輩へ向けていた蜜の顔を思い出しながら、安否の確認に答えることにした。
のだが……
「うん。俺も平気だな。目が覚めた時に先輩に膝枕されてた時は、驚いたけど」
「膝枕……?誰に……?」
「あっ、やべ」
他のことを考えながら答えるべきじゃなかった。
と、自分のしたことに後悔していると
「黙らせるだけじゃダメみたいね。下半身ぶっ壊すか」
案の定、蜜の墨谷先輩への殺意再発である。
俺は慌てて逃げるように指示しようとしたが
「墨谷先輩逃げ……って、いないし!少し目を離した隙に逃げたのか」
縄は何故か解かれ、既にその場には墨谷先輩がいなかったのである。
「ちっ、逃げ足の早い根暗女が」
「蜜……?」
「あっ、しーちゃん起こさないとね。ちょっと向こうの部屋行って様子見てくる」
そう言って蜜は駆け足で俺の部屋を出ていく。
俺は改めて蜜の闇の深さを思い知ってしまったのであった。
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