第8話 呪いのパターン

恋人になったわけでもないのにお尻を触れというミチルの提案は衝撃的過ぎた。


「そ、そこまで必要、か、なあ」


「わ、私だってやりたきゃないわよ。でもせっかくお客さんがきて、あなたが霊視できなかったら、と、とんだ赤っ恥でしょう」


ミチルは、イライラした口調で言った。


「お尻はやり過ぎだよ、太ももくらいでいいよ」

僕は彼女の迫力に圧倒されながら応えた。


「……わ、私、村上君の呪いのパターンを知りたいの」


「え」


予想外の言葉に、僕はミチルの顔をまじまじと見つめながら言った。


「キスだったら幽霊見えちゃうでしょ。お尻だったら、別のもの見えないかなって思ったのよ」


 ミチルはますます顔を赤く火照らせて言った。もうアメリカン・チェリーくらいには赤くなっている。


「別のものって……」


それでも、僕は変な感動で声が上ずってしまう。


「わ、私の我儘聞いて、助けてくれる村上君のこと真剣に……思っているんだよ」

「で、でも僕の力はy○utubeに映らないけど」と僕は照れ隠しに言った。

「もう、真面目に言っているのに」

ミチルは頬を膨らませて、僕をにらむ。


「村上君だったら、いいパートナーになってこの神社をいっしょに守っていってくれそう」


「へえええええ」と僕は話の物凄い飛躍に目を剥いて言った。嬉しいけど、高校生なのに、もう将来のことを具体的に妄想するミチルの飛躍にビビる。


「お父さんに……も、もう村上君のこと話したよ。村上君の呪いの相談にいこうよ」


「呪いかあ……」


「いい解決方法見つかるよ」


僕はミチルという巫女は予想以上に思い込みが激しく、世話好きなんだなってちょっと呆れていた。


「とにかくお尻はやりすぎだから、足とか触らせて」

「ねえ、なんでそんな勇気がないの」

「へ」

「呪いの本質を知りたくないの?」


ミチルは小動物が胡桃を奪われた直後みたいに、僕をにらんだ。


「太ももとお尻で何の違いあるっていうんだよ」

「エッチな気分が違うと、よりレベルの高い霊が見えたりするかもでしょ」

「上級霊を見て何になるんだよ」

「いやあ、それって素敵じゃない」


僕はミチルの口調に不信感を感じた。


「もしかして、守護霊診断とかいって別の商売考えてるとか」

「ああ、あるよ。そういうのもあるよ」


巫女は開き直って言った。


「貧乏神社を立て直すなら何でもやりますよ」

「ミチル……」


白けるかと自分で思ったが、僕はますますミチルが好きになった。稼業を守る女子は格好いい。池上みたいに、故郷を早々に見捨てて都会を目指す子よりも何千倍も素敵だ。


「でも村上君の治療にもなるって気持ちのほうが強いよ」

「分かったよ。でも明日決めよう」


ミチルのお尻を触って上級霊と対峙する勇気はまだなかった。でも、思わずミチルの袴から僕は視線を外していた。

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