第2話
圧倒的な音圧と、究極のパフォーマンス。
一目観て、惚れてしまった。
身体の動きと音の流れが、一致している。こう来るだろうと思ったところに、その通りの音が攻めてくる。肌が震え、腰の後ろのところがむずむずする。
「すごい」
照明が暗くなり、曲が流れ、そしてまた、明るくなる。
「すごすぎる」
5年走ってきた。自分の足だけでいろんな地方を回って、才能ある若手を発掘し続けてきた。
そして、この5年で、最も巨大な才能に出会っている。今。というか、初めての感情を抱いている自分に、戸惑っている。
独占したい。
あのボーカルを。
あの音を。
恋愛曲は聴くが、実際に恋愛を経験したことはなかった。音のある生活に埋もれすぎていて、そもそも相手が見つからない。
パフォーマンス終わりを狙って、声をかけた。あれだけの才能。あれだけのパフォーマンス。音と身体の絶対的なリンク。まちがいない。あのボーカルは、普通の人間ではない。
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