第46話 護衛で隣の村にいくよ!

 屋敷の食堂で美味しい夕食を食べて一息つく。

 メリィちゃんとマリーちゃんも一緒だ。

 ここの料理は本当に美味しい。

 元の世界の料理に似た料理まででてくる。

 昔に召喚された勇者が伝えたみたい。


「チカ。ギルドはどう?」

「うん!大丈夫だよ!統括のお爺さんもよくしてくれるしね。」

「ん!ならよかった。」


 マリーちゃんは心配そうな様子だ。

 最近少しマリーちゃんは変わった気がする。

 出会った頃は無表情だったのに、最近は感情が表情にでることが増えてきた。

 私に気を許してくれたのかな?


「ギルドは派手に吹き飛ばしてたけどニャ。」

「おー。さすがチカ。私も見たかった。」


 メリィちゃんが食事を食べながらニヤニヤした顔で私を見つめる。

 もう忘れてほしい。

 あんなに吹き飛ばすつもりなかったんだよ!


「ニャハハ!結果的には良かったけどニャ!冒険者達にはいい薬になったニャ!」

「うん。確かにそうかもね。」


 この街の冒険者からはあれ以来絡まれることがなくなった。

 遠巻きで見られる程度だ。

 それより街の人達のほうが問題だ。

 街を歩いてると囲まれることもある。

 善意からの行動なので対応にすごく困る。

 時間が解決してくれるのを待つしかないよね...。


「チカ。明日はなにするのニャ?」

「明日は護衛の依頼で隣の村までいくつもりだよ!」

「あそこは静かでいい村ニャ!最近チカも大変だったしゆっくりしてくるといいニャ!」

「ん。それがいい。私はそろそろ横になるね。二人ともおやすみなさい。」

「マリー。私も一緒にいくニャ!じゃあチカまた明日ニャ!」

「うん!二人ともお休みなさい。」



 食堂をでてお風呂でさっぱりしてから部屋にもどる。


「この部屋にも慣れてきたなあ。」


 最近は猫耳パーカーにも抵抗がなくなってきてる自分がいる。

 慣れってこわいなあ。

 でもこの猫耳パーカー便利なんだよね。

 意外に丈夫だし、小型収納ポケットもある。

 探したけど小型収納ポケットがついた衣類や防具は他に見つからなかった。

 王都に行けばあるのかな?


 マリーちゃんなら分かると思うけど、猫耳パーカーを愛するマリーちゃんには絶対聞けない。


「ふう...。そろそろ寝よっかな。」


 明かりを消してベットで横になった。




 翌朝。

 護衛の依頼のために街の門まで向かう。

 街の門でしばらく待っていると3人の冒険者と荷台のついた馬車がきた。

 あれが一緒にいく冒険者と依頼人かな?

 馬車って乗ったことがないから楽しみだ。


「おまたせしました。私は今回の依頼人で隣の村の村長をしております。ゼベットです。今日はよろしくお願いします。」


 村長のお爺さんは深々と頭を下げる。

 冒険者達の方を見る。

 一人見覚えのある女性冒険者がいる。

 あれ?アージェさんだ。

 アージェさんは笑顔でこちらに近づいてくる。


「チカさん!お久しぶりです!今日はよろしくお願いします!」

「アージェさん久しぶり。こちらこそよろしくね!」


 あれ?

 アージェさんの雰囲気ちょっとかわった?

 もっとクールな感じだった気がするんだけど。


「俺はDランク冒険者のガルムだ!よろしくな!」

「私は同じDランクのエリーゼです。よろしくお願いします。」

「足を引っ張らないように気をつけてくれよ?」

「ガルム!そんな言い方しちゃダメでしょ!チカさんごめんなさい!」

「ちっ。分かったよ!悪かったな。」


 ガルムは少し困った顔で頭を掻く。


「私はチカだよ。二人ともよろしくね。」


 二人とも15歳前後で男女の冒険者だ。

 仲良さそうだけど友人同士なのかな?


「では冒険者の皆さんそろそろ行きましょうか。お昼までには村につきたいので。」


 私達は荷台に乗り込む。

 荷台の中には何も積まれていなかったので適当な場所に座る。

 アージェさんはなぜか私の隣に座った。

 どうして隣に?

 こんなスペースがあるのに。


 依頼人のお爺さんが運転席に乗り込むと馬車が動き出した。


 馬車が走りだすと想像以上に縦揺れがひどい。

 お尻が痛くなりそう。

 クッションを持ってくればよかった。


「馬車って結構揺れるんだね。」

「チカさんは護衛の依頼は初めてなんですか?」


 アージェさんは不思議そうな顔をしている。


「うん。そうだよ?面白そうだったし、隣の村にも行ってみたかったから受けてみたんだあ。」

「そうだったんですか。じゃあ今までは討伐の依頼を中心に?」

「そうだよ。」

「どんな魔物を倒してきたんですか?」

「グレイスリザードかな。」

「えっ。他には?」

「あとは依頼じゃないけど西の森のお猿さんと角の生えたウサギかな。」

「そ、それだけですか?」

「えっ。そうだけど。」


 アージェさんは目を見開いて驚いた表情で私を見つめる。

 ガルムはこちらを見ながら溜息をつく。


「アージェさんはなにをそんなに驚いてるんだ?受付のメアリーさんの話だとFランクがひとり同行するって話だったぜ。なあ?エリーゼ。」

「はい。私もガルムと一緒にメアリーさんからそう聞きました。」


「そんな...。チカさんがFランク?じゃあどうやってあんな強さを身につけたんですか!?」


 エリーゼとガルムは首を傾げる。


 やらかしたあああっ!!

 アージェさんからしたらそうなるよね!

 それもこの前ギルドで偉そうなこと言っちゃったよ...。


 アージェさんはスッと立ち上がると、両手でガシッと私の両肩を掴んだ。

 真剣な眼差しで私を見つめる。


「チカさん!!」

「は、はい!」

「教えてください!!どうやったんですかああ!!」

「ち、ちょっと!アージェさん!立ったりしたら危ないよ!そんな揺らさないで!」



 アージェさんの叫び声が馬車の中に響き渡った。

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