第45話 王都の冒険者だよ!


「チカ様。大変失礼しました! すぐ確認しますのでギルドカードをよろしいですか?」


 慌てた様子で受付の女性は頭を下げる。

 バックからギルドカード取り出して受付の女性に渡す。


「うん。私の名前はチカだから気をつけてね。黒猫じゃないよ?」

「は、はい。すいませんでした。ギルドカードをお返し致します。依頼の討伐も問題はありません。こちらが報酬になります」


 報酬を受け取りバックにしまう。

 せっかくだし依頼を見ていこうかな。



 依頼が張り出されてるボードに向かう。

 お昼すぎだからなのか街の修繕に関する力仕事系の依頼が目立つ。

 力仕事じゃ役に立てそうにないね。


「ちょっとだけいいかな?」


 んー。今日はもう帰ろうかな?

 特にやることもないし。


「おい!リーダーが呼んでんだろ!」


 あっ!この護衛の依頼おもしろそう。

 隣の村まで他の冒険者3名と合同での護衛で、なにより食事付きだ。

 ボードから依頼を剥がす。

 そういえばこの世界ってお弁当とか売ってるのかな?

 あとでメリィちゃんに聞いてみようかな。


「おい!チビネコ!無視すんじゃんねえ!」


 依頼を眺めていたら後ろから不快なワードが聞こえたので振り返る。

 3人の冒険者が私を見つめていた。

 筋肉質なハゲた男性冒険者とナルシストぽい男性冒険者と妖艶な雰囲気のスタイルのいい女性冒険者だ。


 私に話しかけてたのか。

 てかいま私のことチビネコって呼んだよね?


「俺ら砂漠の風を無視するなんていい度胸じゃねえか!」

「名前呼ばれないと誰に話しかけてるのか分からないよ。馬鹿なの?」

「ああん!?」


 顔を真っ赤にしてハゲた男性冒険者が詰め寄ってくる。

 なに砂漠の風ってパーティ名。

 砂漠の出身とか?


「いい度胸じゃねえか!このクソガキ!」

「ジェーソン。やめないか。」

「リーダー!だけどよお!」

「ふう。悪かったね。お嬢さん。私は砂漠の風のリーダをしているレオンだ。よろしくね。」


 前髪を弄りながら笑顔で手を差し伸べてくる。

 うわー...。私の苦手なタイプだ。


「私はチカだよ。よろしくね。それで用件はなに?」

「チカちゃんはつれないなぁ~。ちょっとガルーダを倒したっていう冒険者に挨拶をしようと思っただけさ」

「挨拶にしてはずいぶん荒っぽいと思うんだけど?」

「この街の救援のためにわざわざ王都からきたのに、すでに全て終わってたからね。気が立ってるのさ。」


 メリィちゃんがそんなこと言ってたね。

 統括のお爺さんと一緒にきた冒険者か。


「私には関係ないよね。もう挨拶も済んだしいいでしょ?」

「そうはいかねえ!!このままじゃAランクパーティの砂漠の風が他の冒険者に馬鹿にされちまう!」


 ハゲた冒険者が顔を真っ赤にして叫ぶ。

 レオンは隣でニヤニヤした表情で私を見ている。

 ほんとうるさいなあ。

 冒険者ってこんなのばかりなの?


『お前らやめないか!!』


 大きな声がした方を振り返る。

 統括のお爺さんだ。

 いいところに来てくれた。


「これはなんの騒ぎだ?」


 統括のお爺さんと目が合う。

 呆れた顔でこちらに近づいてくる。


 そんな顔されても困る。

 私は依頼を見てただけだよ。


「またチカか。今度はどうしたんだ?」

「この冒険者達に絡まれたんだよ。お爺さんと一緒にきた冒険者でしょ?」

「レオン。私はチカにちょっかいを出すなと言わなかったか?」

「いやだな~。そんな睨まないでくださいよ。ちょっと挨拶をしようと思っただけさぁ!」

「このままじゃ馬鹿にされるからって絡んできたよ。」


 また絡んできても面倒だからね。

 統括のお爺さんに釘を刺してもらおう。


「レオンどういうことだ?」

「それはジェーソンが勝手にやっただけさ。」

「そうか。それでなんで止めないんだ?」

「もちろん止めたさ~!ちょうどそこに統括がきたってわけだよ。」


 このナルシストもろくな奴じゃないね。

 でも一緒にいる女性の冒険者だけ困った顔してるんだよね。

 あの人は少しはまともな人なのかな?


「チカ。レオン達が言ってることに間違いはないか?」

「レオンさんは私が絡まれてるのをニヤニヤして見てたよ。」

「おい。言ってる事に相違があるようだが、どういうことだレオン。」

「い、いやそれは...。」


 統括のお爺さんは大きく溜息をついた。


「もういい。お前らちょっと俺と一緒にこい。あとチカ。」

「ん?なに?」

「今度からなにかあったらギルドに相談してくれ。」


 それはすごくありがたい。

 絡まれるのにうんざりしてたんだよね。


「これ以上ギルドを破壊されても困るからな。ここにいる冒険者達も分かってると思うが命が惜しければちょっかいを出すんじゃないぞ!」


 周りの冒険者達は凄い速さで頷く。


 ひどい。

 まるで腫れ物扱いだ。


 統括のお爺さんと砂漠の風の冒険者が広間をでていく。


 私はさっき剥がした依頼を受注するために受付カウンターに向かった。

 カウンターにメアリーさんが座ってる。

 あれ?さっきまでいなかったよね?

 少し疲れた顔してるけど大丈夫かな。


「チカさんも色々大変ですね。お疲れ様です。」

「ありがと。メアリーさんはいつきたの?さっきまでいなかったよね?」

「さきほど統括と一緒に来たんです。」

「そうだったんだ!なんか疲れてるみたいだけど大丈夫?」

「ええ。実はですね。今度この街のギルドマスターに任命されることになったんです。」


 おー。出世ってことかな?

 メアリーさんなら安心だね!


「メアリーさんおめでとう!」

「おめでとうじゃないですよ!」

「えっ。どうして?」

「私なんかがギルドマスターだなんて...。不安で仕方ないんです。」

「メアリーさんなら大丈夫だよ。私もできる事があれば力になるよ。出来る限りだけどね!」

「ありがとうございます。」


 あんな乱暴な冒険者達をまとめるんだから不安なのは当然だよね。

 ギルドのお仕事も大変だ。

 私はもっと楽な仕事を探さそう。

 ずっと冒険者をしてるわけにいかないしね!


「それでチカさんは依頼の受注ですか?」

「うん。この護衛依頼を受けたいんだけど大丈夫かな?」

「そうですねー。他の冒険者達もいますし、隣の村までの護衛だけですからFランクのチカさんでも大丈夫ですよ。」

「よかった。じゃあお願い!」

「かしこまりました。」


 無事依頼を受注してギルドをでる。

 疲れたのでそのまま真っ直ぐ屋敷に向かった。

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