第3話 女神にだまされたよ!

 草木が風に揺れる音と鳥の囀る鳴き声に気づいてゆっくりと目を開けてみると、目の前に見渡すかぎりの草原が広がっていた。


「こんな場所に放り出されてどうしろっていうのっ!? せめて近くに人が住んでる街とかがある場所にしてよっ!!」


 チカは溜息をついた後、ゆっくりと後ろへ振り返る。後方には草や木々が生い茂る深い森が広がっていた。人の気配は感じられない。


「はあ......。とりあえずミリアーヌさんが言ってたステータスを確認してみようかな。」


チカが「ステータス!」と叫ぶと、目の前に透明なディスプレイ画面が出現した。


「おーっ! ゲームみたいで少し楽しいかも。えーと、これを見ればいいんだったよね?」



 ---------

 名前:山川知佳 

 LV:1

 種族:人族

 職業: -


 ミリアーヌの加護(創造改変)

 --------



「──えっ? これだけ?」


 あっ、どこかに触れれば詳しくでてくるのかな? 詳しく見れるようになってるって言ってたもんね。だ、大丈夫だよね?


 チカはステータス画面に向かって手を伸ばすが、伸ばした手はステータス画面をすり抜けて空を切る。


「──なにも変わらないんだけどっ!?」



 あのあとしばらくステータス画面で色々試してみたけど、なに一つ変わることはなかった。

 だましたなっ!! あの駄女神めぇ~!


◆◇◆◇


「はあ......。これからどうしよう。」


 水も食料もない。

 それどころかなにも持ってない。

 加護もよくわからないし。

 近くに街も見えなければ、ここがどこなのかもわからない。完全に迷子だ。


「確かこの世界って魔物とかもいるって言ってたよね......」


 チカは慎重に周囲の様子を窺ううかがう


 茂みから突然何かが襲い掛かってきたりしないよね? 映画とかでよくあるパターンだ。


「と、とりあえず進んでみようかな。草原と森どっちにしよう。」



 少し考えたあと私は草原を進むことにした。

 はじめは草原で魔物に出会っちゃったら逃げられないじゃん! って思ったけど、よく考えたら森でも逃げられる気がしない。


 自慢じゃないけど私、小さい頃から足が遅いんだよね......。学校とかで持久走とか短距離走とかあったけど、いつも後ろから数えたほうが早かったし。


「あ、そうだ。手頃な大きさの木の枝を森で取っておこうかな。」


 チカは森を軽く探索して手頃な長さの棒を拾い上げてから、草原に向かって歩きだした。


「これはもう、こわい魔物がたくさんいるところや街が近くにない場所に送られてないことを信じるしかないかな。」


 ミリアーヌさん適当そうだったからなあ。

 すごく不安だ......。

 

 ──お願いします。どうか近くに街がありますように!


 そう思ってた時期が私にもありました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る