女神様から加護をもらったので、猫耳パーカーを着て楽しく生きていきます!

ヨモギ餅

はじめての異世界

第1話 娯楽のために連れ出されたよ。

 

 気づいたら辺り一面真っ白な空間にいた。


 突然のことに驚き、慌てて周囲を確認すると頭上に旗のように長い紙みたいなのが浮いていることに気がついた。


 「なにあれ? どうやって浮いてるの? ん? よく見るとなにか書いてあるような。えーと……」



『おめでとう! ようこそ新しい世界へ!(笑)』



「……えっ? なにこれ? すごく悪意を感じるんだけど。ここは一体……どこなの?」



 私は山川知佳22歳。両親と4つ下の妹の舞との4人家族だ。身長は小柄でよく高校生に間違われる。ホント失礼だよね?

 大学をでて就職も決まったので、少し前から1人暮らしを始めた。社会にでるのは不安だけどいい出会いもあるかもしれないし、凄く楽しみだ!

 全て順風満帆! ……のはずだったのに。

 どうしてこんなことに!?


「たしか……。さっきまで私は部屋でスマホを見ながら横になっていたはず……だよね?」


 いつのまにか寝ちゃったとか? 

 んー。でも夢にしてはずいぶん感覚がリアルというか……。なんだか起きてる時と変わらないくらい意識もハッキリしているような気がするんだけど……?


「はじめまして! 私は女神ミリアーヌよ!」


「ひゃっ!?」


 突然、背後から女性の声が聞こえてきたことに驚き、おもわず変な声が口から漏れる。

 振り返ると、20歳前後の金色の髪をした女性が満面の笑みで私を見つめていた。


 えっ? さっきまでそこにいなかったよね? 

 それも貴族みたいな名前を名乗って、自分を女神って……。あー。あれかな? ちょっと残念な人なのかな?


「山川知佳ちゃん! あなたにはこれから私の世界に来てもらおうと思ってるの。たくさんの人たちの中からあなたは選ばれたのよ? おめでとうー!!」


 そう言うと、金髪の自称女神様はニコニコしながら両手を上げて、私に拍手を送ってきた。


 困った。どうしよう……。状況がまったく理解できない。これどう反応すればいいの? 

 待って。っていうか選ばれたってなに!? 


 頭の中で次々と疑問が湧いてくる中。ふと最悪な展開が私の脳裏を掠めた。

 

 真っ白い空間……それに夢とは思えないこのリアル感覚……極めつけは目の前に自称女神様……?

 あれ? これってまさか……。

 私……死んじゃったの?


 心臓がドクンドクンと耳障りに感じてしまうほど大きく高鳴る。


 だめだ。考えてるだけじゃ状況が全く理解できない。怖いけど確かめなきゃ……!


 私は意を決して恐る恐る口を開いた。


「はじめまして。えっと……部屋で何かが起こって私は死んじゃった。……ってことですか?」


「死んでないわよ? さっき言ったじゃない。選ばれたの! ほら最近下界のアニメとかで異世界転生とか転移とかっていうのが流行ってるみたいじゃない? それを見ていた私たちのいる天界でもブームになっててね! 面白そうだし実際におくっちゃおっかーってことになったの!」


 ミリアーヌさんは説明しながらニッコリ微笑んで楽しそうにしてる。


 おう……。思ってたより最悪な状況だった。

 死んでたよりはマシちゃマシだけど、要するに異世界に出荷されるってことだよね。これ。

 ん? いや待てよ? っていうか……。

 

「今の状況って全部あんたのせいってことじゃん! 勝手に私を選ばないでよ!!」


「あら? あんまりチカちゃん嬉しくなさそうね? 大好きでしょ異世界! 未知の冒険があなたをまってるのよ?」


「…………」


 ……わかった。やっぱりこれ夢だ。明晰夢ってやつ? だって話が全然噛み合わないんだよ? 夢によくあるやつじゃん。もう考えるのはやめよう。

 あっ、そんなことより早く起きて冷蔵庫で冷やしておいたプリンを食べないと! 

 就職祝いにー、と思ってすこし高いの買っちゃったから楽しみにしてたんだよねー♪


 私は夢から目覚めるために、目を閉じながら自分の腕をギュッと強めにつねった。

 腕に鋭い痛みが走る。

 

「イタタっ!!」


 で、でもこれで起きれたかな?

 痛いってことは……そういうことだよね!?


 私がゆっくりと目を開けるとそこには……。

『おめでとう!ようこそ新しい世界へ!(笑)』

 と書かれた紙を手に持ちながら、ニコニコとした笑顔で私を見つめる自称女神様の姿があった。


 夢じゃないんかいっ!!



 ◆◇◆◇



「ねぇ、ミリアーヌさん。私異世界とかに興味がないので帰ることはできませんか?」


「それは無理ね! ちかちゃんの世界からこの空間に呼ぶことはできても戻すことはできないの! 残念でした♪」


「残念でした♪ っじゃないよッ!!」

 

 もしこれが夢じゃないのなら最悪だ。この自称女神様の言ってることが事実なら、私はもう二度と帰れないし家族にも会えないってことだ。


「あはは! そんな悲しそうな顔しないで? これからいってもらう世界にも人間はいるから。それにそれだけじゃないの!」


「それだけじゃない?」


「なんとっ! 獣人や妖精とかもいるのよ。それに魔法やスキルとかも存在するファンタジーな世界ってわけ!」


 なんかゲームみたい。学生の頃にはまってたVR MMO RPGを思いだすなぁ。本当に戻れないなら不本意だけど、もうプラス思考で考えていくしかないのかな……。でも家族のことだけ心配だなー。急に私がいなくなってきっと心配してるよね……。



「あっ! あと魔物や魔王なんかもいるわね! でも安心して? あっちの世界の住人が召喚した勇者がいるから!」


「それなら安心だね! でも勇者がいるなら私はなんのために呼ばれたの?」


「それはね……」


 ミリアーヌさんは急に真面目な表情で私を見つめる。私はミリアーヌさんのあまりの変化に戸惑いながら、おもわず唾を飲み込んだ。


「……見てて面白くないのよね。ほら、私が召喚させたわけじゃないし。感情移入できないみたいな?」


「はい……? えっ!? そんな理由なの!?」

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