第7話 秘密の女
戦いが終わる。占い通り、王様は無事帰還。
本当に二万対三千の無謀な戦いを勝利。見事な地形を活かした兵法。相手の油断を突いた奇襲戦法。オワーリの王、ノブナーガの名は一夜にして各地の王を震え上がらせた。誰もが小国の王など相手にならないだろうと考えていた。大国の王に次の標的とならないように策を巡らせることしか出来ないでいた。ところが自分の領土より小さな王が大国の王を撃破。これほどの衝撃があるものかと各地の王から書状がひっきりなしに届く。
(不思議な世界よね・・・)
戦いは昨日決着していた。それなのに各地にその結果が伝わっているなんて・・・。
(この領土にも他国のスパイが・・・)
私が心配することではないが、中には貢ぎ物を送ってくる者。自分の娘と婚姻させ、同盟を願い出てくる者が急に増えた。
私は特に何も戦っていないが、王様の勝利を見透したとのことで感謝された。王様付きの特別待遇となる。
今回の報奨金として別宅を与えられて、執事達とノンビリと過ごしていた。牢獄の女から大出世である。
ただし、執事とは名ばかりの監視役と護衛付き生活。プライベートなんか無い。二十四時間監視体制である。「セ○ムしてますか?」と言わんばかりに付き添われて正直なところウンザリしている。厠まで着いてくる始末。出るものも出ない状況。
(ちょっと大げさよね)
王様から、他国に知られてはマズイと私は秘密の女となっている。
(もう他国のスパイにバレていると思うけど・・・)
私は占いだけで戦国の世を生き抜く決心をした。
この世界で暮らしていく。命のある限り。
王様は、たまに私の屋敷に遊びにくる。
迷った時のなんとやら・・・らしい。
王様の道しるべとなっている。戦いや政治のことは分からないが、進むべき方向は占いで示せる。王様が二択の選択肢を投げかけるからだ。
今、この領土は他国から侵略される心配はない。
政略結婚などで同盟関係を築き上げ、この領土は更に発展した。王様の善政による賜物だ。私はほんの少しだけ手伝った。本来、占いなんてその程度。
私はそれなのに王様から重宝された。
ある時、大臣の紹介でセーンと名乗る男とお茶をすることがあった。坊主頭の厳つい姿だった。筋肉粒々の肉体。その姿を一言でいうとハゲゴリラ。サングラスをすればきっと・・・。
その姿とは違い、器用に力加減をしてリズムよくお茶をたてる。私はそのお茶に興味津々。
(いったい、どのような味なのか?)
差し出されたのは、何と泡だてられたお茶。私は一口飲んだ。抹茶の香りが鼻から抜ける。口の中の渋味が茶菓子の「ようかん」を引き立たせる。私はこのお茶とようかんの組み合わせに恋をした。
(王様に頼もう。彼を執事に加えて欲しい)
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