第19話 そんなこんなで少女に出会いました

 まあ、そんなこんなで、色々な事があって、逃げおおせた俺は再び『イルゼ』の町に戻って来た。


 まだ戦闘中だという事もあって、当然、町の人々が戻って来ていないので、無人の町のままだが…………。


 それはそれで好都合。


 さっさと着替えて、この町を出て行こうと思う。


 え?


 なら、一度町に戻らずに、適当な所で着替えてこれば良かったんじゃないかって…………?


 いやいや、実はこの俺としても、ついうっかりやり忘れていた事があったのだよ。


 それが何かと言うと----------------



 俺、この世界の地理って、よく分かってねぇんだわ。


 簡潔に言えば、『地図』みたいなものが欲しい。


 だから、適当に着替えて、一番可能性のありそうなギルド内に入って------------


「…………?」


 可笑しい。


 何やら、視線のようなものを感じる。


 場所は……………………このギルドの中か…………?


 あっぶね!!


 もうちょっとで仮面を取るところだった。


 それにしても、一体誰がいやがるんだ?


 こういう時は慎重に…………。


「…………何してるの…………?」


「うっおっ!!!」


 壁に背を付けて、中の様子を窺おうとした時だった。


 突然、声をかけられて、素で驚く俺。


 ギルドの出入り口付近から、ひょっこりと顔を出して、不思議そうに俺を見つめて来る少女。


 一体全体、何処から湧いて出て来やがった!!?


「ねぇ…………何してるの…………?」


「それはこっちが聞きたいんだが…………?」


「私が何をしているかって…………?


 私はあなたを待っていたのよ」


 はい、面倒ごと確定の予感。


 フラグが立ちましたね。


「どうも、ハズレ勇者様。


 わたくし、リズネーゼ王国から参りました。


 クーネと申します」


「…………リズネーゼ王国…………?」


 おいおい、その国って確か-------------


「はい。


 あなた様を追い出した王国です」


「……………………」


 にこやかに答えてんじゃねえ…………。


 勝手に召喚しておいて、ハズレだとか何とか言って、殺そうとした国の連中が今更、何しに来た。


「担当直入に申し上げますと、王国にお戻り頂けませんか?


 それ相応の対価と待遇をご用意致しますので…………」


「断る!!」


 まあ、これ以外の答えなんてねぇよな…………。


 嫌な予感がバリバリするし…………。


「そうですか…………。


 なら、こちらもそれ相応の対応はさせて貰いますね」


 クーネとかいう少女が指を鳴らすと、何処にいたのか黒い服を纏った集団が、俺を取り囲んでいた。


 ほんと、今日はやたらと休む暇がない日だ。


「ほんと、めんどくせぇ…………」


 そう空を仰ぎながら、とりあえず、行動に移す俺。


 数分と掛からずに、黒服集団を制圧する俺を見て、にこやかな笑顔を引きつらせるクーネとかいう少女を睨み付けた。


 そして、一歩一歩、歩を進め、少女の前に立って一言----------------


「次あったら…………殺すぞ…………」


「ひ、ひいっ!!」


 少女は恐怖に顔を歪め、尻餅を付くと木製の床を湿らせていく。


 全く、こんな事するくらいなら、初めから追い出そうとするなよな…………。


 あまりにも、馬鹿らしいリズネーゼ王国の連中に呆れてため息を溢した俺は、再び冒険者ギルドへと入っていく。


 そんで、地図と思しきものを発見すると、それをアイテムボックスに収納----------------もとい、ネコババ(一つくらい貰っても問題ねぇだろの精神で)して、外へ出た。


 そしたら、あのクーネとかいう少女とあの黒服集団が全員ギルド前で土下座していた。


 ほんと、一体何なんだよ!?

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