第14話 仮面のヒーロー

「…………まぁまぁだな…………」


 辺境の町『イルゼ』-------------


 今まさに、スタンピードが起ころうとしている頃。


 俺は避難を終えた無人の町で、宿屋と思しき建物の中にあった姿見で、黒衣のローブに身を包んだ仮面の自分を眺めていた。


「適当に見繕ってはみたが…………。


 想像以上にダッサ…………。


 マジで引くわぁー…………」


 実はガキ大将を気絶させたあの後、目に入った露店でこの仮面とローブを購入し、数日分の食料を購入した俺。


 おかげで財布の中は空っぽになったが…………。


 まあ、しばらくは安泰だろう。


 いやいや、そうじゃなくてだな…………。


 とりあえず、これで身バレの心配はない筈だ。


 後は漫画や小説とかで良くある声バレとかか?


 なら、念のためボイスチェンジャー辺りを作るべきだな…………。


 そう思い至り、無言でスキルで作ったチョーカーを首に付ける俺。


 てか、何やる気になってるんだろう。


 ほんと、柄じゃねぇよ。


 厨二臭過ぎて、痛い。


 あぁ、ほんと、恥ずかしくて死にそうだわ。


 まぁ、やると決めた以上、やる事はやるかね。


「確か、こっちの方角だったな…………」


 ボイスチェンジャーをオンにして、立て掛けてあったライフルを背負い、駆け出す。


 屋根から屋根へと飛び移り、森へと入って行く。


 しばらく、森を駆け抜けて行く内、静か過ぎた森が急に喧騒として来る。


 丁度、見渡し易そうな木々へと跳躍して、周りを見渡してみる。


 こういう時、勇者特権の身体能力は便利だと思う。


「うっわ…………きっしょい…………」


 だが、登り終え、周りを見渡した時、前言撤回したくなった。


 何せ、幾重もの黒い点が辺り一面、細波の如く町の方へと押し寄せて来るその光景は、台所の嫌われものでもある、かのGさんが迫って来るようで気味が悪い。


 ほんと、さっさと終わらそう。


 俺は背負っていたライフルを構えて、スコープを覗き込むと、その引き金に掛けた指を引いた。

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