ケース1 女子高校生失踪事件(ミステリー)

第2話 ケース1 女子高校生失踪事件①

 ――キーンコーンカーンコーン。

 本日の授業がすべて終了したことを告げる鐘の音が、校舎中に響き渡る。

 受験を控えている三年生ならピリピリかもしれないが、私たち一年生からすれば、かったるい授業から解放されたのだから、自然緩い空気が教室を満たす。

 ――けど、

「里香、元気ないね、大丈夫?」

「藍子、大丈夫……ごめん、嘘、元気ないかも」

 心は空気の抜けた風船みたい。ざわざわとした不安と、タンクから急速に抜けていく水にも似た焦りを私は感じていた。――理由は、冷夏がいなくなったからだ。

「私も同じだよ。冷夏、今日も来なかったわ」

「……うん、今日が木曜で、冷夏は火曜からいなくなったから、三日経っちゃった」

 冷夏は、少し茶目っ気がある子だが、根はまじめだ。彼女が無断欠席するなんて、おかしいよ。

 藍子も同じことを思っていたのか、納得いかないと言いたげに首を振った。

「ねえ、冷ちゃんも事件に巻き込まれたのかな?」

 も、という言葉に引っかかりを覚える。

 私は説明して、と眉をひそめた。藍子は察したようで、声を潜めて話してくれた。

「女子高校生失踪事件って知ってる? なんかさ、最近ここら辺の学校に通う女の子がいなくなってるって」

「そんな、じゃあ冷夏もその事件に――」

「落ち着いて」

 ガッと藍子に肩を掴まれた。

「ごめん、余計なこと言ったわ。その事件ね、リンクアプリ――SNSの一種――を通じて画像が送られてくるの。その画像を見た子が、いなくなるんだって。冷夏から変な画像が送られてきたって相談されてないでしょ。だから、大丈夫」

 まくしたてる藍子。……ちょっとだけホッとした。確かに、そんな相談はされてない。都市伝説みたいな話だし、それはないのかな。

「ねえ、藍子。冷夏の家に行ってみない? もしかしたら帰ってきてるかもしれないし」

「うん、そうだね。きっと、そうだよね」

 肩に触れた藍子の手が震えている。

 彼女の手に手を置くと、ヒヤリとしていた。

 ――きっと大丈夫、冷夏は家にいて笑って私たちを出迎えてくれるんだ。

 強く、祈るように思った。けれど、藍子の冷たい体温が移ったみたい。お腹の底から冷えた感触が湧き上がって、鳥肌が立ってしまった。

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