Philia

幕間


 初めて出来た友人は引越しがしたいとよくぼやく。実際にするつもりはないようだったが、広い部屋に住みたいのなら家に空き部屋がいくつかあると伝えてみた。友人、朝陽大輝は、恐ろしく嫌そうな顔をしたあとに私の肩を拳で叩いた。

「加奈子の部屋片付けたか?」

「いえ、手付かずですね」

「そこが更地になったらもう一回言え」

 前向きに検討するらしいので嬉しくなった。朝陽はテレビでニュースを見ながら、片手間で持ち帰りの仕事をこなしている。

 やることもない私は台所に向かって料理を作り始めた。一度朝陽が寄ってきて、妙なものを入れていないか確認してから戻っていく。何も入れないと言っても信用はされない。信用はされないが、作ったものは残さず食べてくれるので、非常に友人らしい。とても嬉しい、味付けミンチをキャベツでくるくる巻きながら、迷惑をかけたぶん報いなければと思う。

「美味そうな匂いする」

「多分美味いですよ、知らんけど」

 朝陽はふっと鼻で笑い、不味かったことはない、と呟いた。喜んだので喜んだ旨を伝えると、お前は面倒くさいと撥ね付けられた。


 これが残暑の話だ。

 私が朝陽に殺されかけるのは、やはりというか、雪がしんしんと降る、冬の話だ。

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