第22話 情報
おっさんから換金版を受け取り、受付に持っていく。
「あっ!レンゲちゃん!!と、ナルミさん。大丈夫でしたか?!」
「……ん!大丈夫!」
ララさんはこちらに気づいた瞬間、食い気味に安否を訪ねてきた。それに対してレンゲも余裕をもって返す。
俺はついでなのね……。まあいいけども。
「ララさん、換金お願いできる?」
「あ、わかりました!」
ララさんはいそいそと換金版を受け取り換金する。
「はい、三つの依頼達成報告完了しました!合計報酬の1000ユルです!大銀貨にしますか?」
「いや大丈夫。あ、明日は服買いに行くから明日は来ないかも」
「わかりましたー!あ、レンゲちゃんはこれでFランクです。気をつけてくださいね?」
「……ん。わかってる」
一応ララさんに休暇報告をしてすぐに帰ることにした。
そういえばFランクの前にGランクがあったなと思いながらギルドを出た。
「………………」
薄ら笑いを浮かべながら、何か意味ありげにこちらを見つけてくる男のことも知らずに……。
♦♦♦
「さて、服を買いに来たわけだけど、俺ってよく考えたら服屋の場所知らないなあ」
「……ん?じゃあ今まで服はどうしてたの?」
「あ~、同じの二枚あったし『洗浄』使えば洗濯みたいに擦れて使えなくなることもなかったんだよなあ」
「……なるほど」
魔法が便利すぎるのが悪いんだ、うん。
「一回宿に戻ってリラちゃんに聞いてみるか」
「……ん、賛成」
そうと決まればすぐに宿に引き返す。
「まだまだ余裕があるわけじゃないけど、奮発してレンゲ用の剣も買うか!」
「……いいの?」
「ああ。お金を貯めるのも大事だけど、ケチりすぎていざって時に武器の性能不足で~なんて笑えないからね。」
「……なるほど」
別に散財癖があるわけではないが、絶対に必要だと思うものには妥協せずにお金を掛ける派なのでレンゲの武器を手に入れることにした。
そんな感じで買いたいものを話し合いながら歩いていてるとすぐに宿についた。
「あ、二人ともお帰りなさい!お昼ご飯ですかね?」
「うん、お願いするよ。それとおすすめの服屋と武器屋とかないかな?」
「服屋と武器屋……ですか?う~ん、服屋なら知ってますが武器屋のほうは知りませんねえ。あ、お父さんがそういう伝手が多かった気がするので聞いてみますね?あ、メニューはいつもので?」
「おお、ほんと?ありがとう!うん、それでいいよ。」
これは帰ってきて正解だったな。何の情報も無く闇雲に探すより早く終わりそうだ。
「服屋はですねぇ、冒険者ギルドの近くに大通りがあるのは知ってますよね?そこの中心にあるおおきな銅像があるんですが、そこから西に……分かりやすくいえば西門方面に向かって歩いていくといくらか服屋が見えるんですけど一件目から数えて四件目の服屋がうちはお世話になっています!」
「武器屋はな、うちに時々飯だけ食いに来てるやつがいんだがそいつがなかなかの腕でなあ、武器を頼んでるわけじゃなく包丁の手入れやダメにしたときに買い替える時に世話になってんだ。まあ俺は別に武器は使ったりしねえが、この前邪魔したときに見せてもらったやつの渾身の出来の剣は素人目に見ても業物だったぞ。飾りっけはねえがそれがまたいい味出してんだ。ほれ、妻に福屋と武器屋近えから簡易的だが地図描いてもらった。せっかくここまでしてやんだからせいぜい大物になってうちのこと宣伝してくれよ?」
「はい!ありがとうございます!リラちゃんもありがとね!」
「……どうも」
ランチを俺達が食べ終わったごろにリラちゃんとジールさんがやってきてお店の説明をしてくれた。
しかもリラちゃん達のお墨付きってことは品質以上のものがあるのかもしれない。
これで今日の目的地が決まったのでいつもより多めにチップを置いてすぐさま店に向かうことにした。
♦♦♦
少し時間は遡る。
男が机を「ガン!!」っと叩く。その男の顔には怒りで満ちている表情だった。
その男の体型は少しふくよかで髪の色と目の色は濃い緑、金が掛かってそうな服を着てることからいい所の坊ちゃんという感じだ。
「……商品を手に入れに行った奴らの馬車が魔物に襲われて商品全て失っただと?しかもそのほとんどが奴隷だと……?」
「はい……。しかも、何故かもうそのことがバレたようで馬車などの回収は不可能かと……。で、ですが!この場所を示す場所や貴重品は何とか回収していたようで……」
「そういう問題では無いのだ!!」
またも男は机を叩きつける。その情報を持ってきた男(以後報告者とする)は「ビクッ!」と肩を震わせる。
「幾ら我々の場所のことがバレていなくとも奴隷を回収出来なければ我々が活動を再開していることがバレるであろうが!」
「す、すいません……」
「すいませんで済む問題では無いのだ!クソっ!慎重に動いて護衛を少なくしたのがダメだったか……。護衛?そうだ、護衛はどうした!あいつらはそれなりに腕が経つ筈だろう!この辺りのモンスター程度に負けるほど弱いわけあるまい!」
実際、馬車の護衛に雇っていた奴らは元Bランク冒険者であり、馬車が通るルートにBランクモンスターは居ないはずだった。
「それが……逃げ帰ってきた者たちの話を聞くに、奴隷の一人が何かしらの魔法を放ったことで行動を阻害されて致命傷を受けたらしいです」
「魔法だと?」
今回のターゲットは子供だけであり、魔力も安定していないガキ共に元Bランク冒険者レベルの不意をつけるほどの魔法を使えるとは思えなかった。
「……まさか!おい、奴にはちゃんと魔力封じの手枷を付けたのだろうな!」
「奴……ですか?」
何のことか分からないと言った様子の報告者に苛立ちを覚えた男は怒鳴るように叫ぶ。
「例の村から依頼された奴だ!忘れたとは言わさんぞ!」
「あっ!す、すいません!」
どうやら報告者も思い出したようですぐさま謝り手元の報告書をめくる。
「あ、ありました。ちゃんと魔力封じの手枷はしていた様です。ですが、状況から察するに奴の妨害で間違いなさそうですから魔物襲撃の際の衝撃で壊れてしまったのかもしれません」
「……そいつの生死確認は?」
「まだ今のところその情報は……」
「ない」っと言いかけたところで部屋がノックされる。
「……入れ」
「失礼します」
そういうと報告者と同じような格好をした男が入ってきた。
ふくよかな男は一度気持ちを落ち着かせ部屋に入ってきた男に話をさせる。
「どうした?緊急のことか?」
「いえ、緊急という訳ではありませんが例の事件に関してあたな情報が入りましたので報告しに参りました」
そう言うと男は手に持った資料に書いてある内容を報告する。
『例の事件』とは奴隷の乗った馬車が魔物に襲われた事件のことであり、ちょうど今話していたことだ。
「先程、依頼として例の事件の探索に出ていた冒険者達が馬車を発見し、魔法道具で情報をギルドに報告しました。内容としましては大破した馬車と数体の魔物の死骸、戦闘の跡、そして人族の子供数人の死体と思わしき残骸が多数あったとのことです」
その内容は普通の人が聞けば嫌悪感を隠しきれないような酷い内容であったが、今ここにいる人間は大なり小なり人間の深い闇に浸っている人間たちであり、自分が良ければそれでいいという考えの元に集まっている者達なので今更そんなことで怯むことはなかった。
「……人族の子供数人……だけ?」
「はい。まだ確定では無いですが子供達が奴隷である事がすぐに察せられる程度の器具が残されていましたので、人族以外の他の種族が居ないかも調べるでしょう。しかも高ランク冒険者パーティであり、尚且つ鑑定持ちまでいたようで信憑性は高いでしょう」
「なる……ほど」
報告者が疑問に思った所を指摘すると、指摘されるとわかっていたように話し始めた。
「では、報告は以上です」
「……わかった、もう下がっていいぞ」
「失礼しました」
男はそのまま部屋を出て行き、報告者とふくよかな男の間に少しの沈黙が流れた。
「……つまり、奴が生きている可能性があるということですね」
「……そういうことだな。この事を報告したのも奴かもしれん。それならこの事件の発覚の速さにも頷ける」
この事件が何故ここまで早く発覚したのか、馬車も発見されていなかったのに即座に探索隊が組まれたことも謎だった。
だが、あの馬車から奴隷の生き残りが居るのなれば話が違う。
「奴は売れば確実に大金になる。ギルドは情報は出さないだろうがそのぐらいなんとでもなる。見つかり次第捕獲し連れてこいと全員に伝えろ!」
「了解しました!」
そうして段々と闇がとある二人に近づいて行った。
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