ドラゴンVSガーディアン!

「もう私の魔法は尽きたから!」


 怒濤の氷の矢でゴリラの動きを止めていたルカだったが、魔法切れで矢は打ち止めになり慌てて逃げ帰ってきた。ついにゴリラが再び動き出した。


「マリンはミネとルカを守って!」


 竜の像を押さえるボクも限界になり、ボクは竜の像に押し倒された。ボクの上に乗った竜の像はマリンたちを炎で狙おうとしている!

 止めなきゃ! ボクは土の魔法で竜の像の横っ腹に岩を当て、竜の像のバランスを崩してやった! と同時に、竜の像に何か大きなものがぶつかってきた! ゴリラだ! コウタさんがゴリラを掴んで竜の像に向けて投げて当てたのだ!

 強い! コウタさんが変身した緑のドラゴンはドラゴンのボクよりも遥かに大きい。

 ゴリラと竜の像は起き上がり、緑のドラゴンに向かっていく。緑のドラゴンにはゴリラも竜の像の攻撃も効いていなかったが、魔法で出来ていると思われるガーディアンたちはいくら緑のドラゴンに投げ飛ばされようとも起き上がる。緑のドラゴンはガーディアンたちをあっちに投げこっちに投げと繰り返すがキリがない。やがて王墓の建物の壁や柱は、ガーディアンたちをぶつけられた衝撃で壊れはじめていた。


「コウタさんは魔法の使い方を知らないから、力で壊そうとしてるんだ。」


 あのガーディアンたちは、金属のような表面だからロボットのようなものだろう。ロボットだったら、水や電気に弱いのではないだろうか?

 ボクは魔法で竜巻を作って緑のドラゴンに投げ飛ばされたゴリラに竜巻を当てようとした。しかし、竜巻はゴリラを掠っただけだった。


「惜しい!」


 それでも竜巻に触れて濡れたゴリラの右腕の動きが鈍くなったように感じた。

 もう一度ボクが竜巻を作ろうとした時、ボクの様子を見ていた緑のドラゴンが空を仰いだ。すると、大きな竜巻が四つ緑のドラゴンの周りに現れた。緑のドラゴンがボクの魔法を見て魔法の使い方を理解したということだった。


「マジで?」


 緑のドラゴンが作った竜巻はひとつに集まりボクの作った竜巻も巻き込んで大きく巨大な竜巻になっていく。ゴリラも竜の像も竜巻に巻き上げられ、かなり高いところまで飛ばされていった。

 ボクはミネたちが飛ばされないように、ミネたちを庇いながら土の魔法で体を地面に固定する。

 ピカ!!

 上空で稲光が走る!


「グォオオオオオオ!!」


 緑のドラゴンが咆吼する!

 ズドン!! と雷がガーディアンたちを貫く!


「魔法陣を知らないはずなのにあんな魔法を使えるなんて。」


 緑のドラゴンが作った竜巻が消えると、竜巻の中で洗濯機のように振り回されたガーディアンたちは完全にバラバラになり、その破片はあちらこちらに降り注いだ。


「はぁ、助かったの?」


 ボクは周囲を見わたした。王墓は滅茶苦茶になっているけれど、ゴリラも竜の像も破壊された。跡にはただ巨大な緑のドラゴンが佇むだけだ。あとは緑のドラゴンから元のコウタさんに戻ってもらえれば……。


「コウタさん、ありがとうございました。人間に戻れますか?」


 ドラゴンのボクが緑のドラゴンに近づこうとすると、緑のドラゴンは威嚇するようにボクに向かってうなり声をあげた。


「コウタさん!?」

「さきほどの魔法……。コウタさんは暴走してるかもしれません。ドラゴンの力に飲まれています。」

「暴走って……!?」


 緑のドラゴンはそれ以上動こうとしないがボクから目を離そうともしない。暴走なんて、まさか?


「どうするの?」

「眠りの魔法を使いましょう。ですが私は危険すぎて近づくことができません。」

「ボクは眠りの魔法なんて使えないよ。」

「……ここに王家に伝わる魔法剣があります。」


 マリンは荷物の中から綺麗な装飾が刻まれた短剣を取り出した。


「これは魔法の杖が発明される以前に使われていた魔法を使えるようにするための武器です。いくつもの魔法を収納できる魔法の杖とは違い、一つだけ魔法を入れておくことができます。これに眠りの魔法を入れます。そうすればリョウさんでも魔法剣を通じて眠りの魔法が使えるようになります。」

「なるほど。」


 あんな魔法を使える緑のドラゴンに近づいて魔法剣をかざして眠りの魔法を使うってこと? うぅ、ちょっと自信無いんだけど……。


「さあ、眠りの魔法を登録しました。お願いします!」

「……よし、やるぞ!」


 気合いを入れたボクは魔法剣を咥えると一気に飛んで緑のドラゴンと距離を詰めた。

 ボクを目で追っていた緑のドラゴンはボクに向けて炎を吐きかける。ボクは緑のドラゴンの魔法がマリンたちに向かないように避けながら背後に回り、そのまま空に舞い上がった。

 狙いは緑のドラゴンの背中! 緑のドラゴンはボクの動きに翻弄されてついてこれていない!


「今だ!」


 ボクは人間の姿に戻ると緑のドラゴンの背中に取り付いた! そして魔法剣を引き抜いて緑のドラゴンの背中に突き立てる! 眠りの魔法を全力で使う!

 直接眠りの魔法を流しこまれた緑のドラゴンは崩れるように倒れ、そしてコウタさんの姿に戻った……。


「……コウタさん……!」


 ティアラさんが倒れているコウタさんに走り寄る。


「……ごめんなさい、私……。」



 緑のドラゴンの魔法が消えて空が晴れて少し経ち、完全に脅威が去ったとわかって、ボクらはやっと落ち着きを取り戻していた。


「これでやっと終わったぁ。」


 ボクはミネが持ってきてくれていた服を着た。


「リョウ、無事で良かった……。もうダメかと思った……。」


 ミネの砂埃と涙で汚れた顔を見てボクはホッとした。ルカはあっちの方でへたっていた。

 破壊された王墓の奥でマリンが何かを探していた。


「ミネ。ルカの様子を見てきてよ。」

「うん。わかった。」


 きっとマリンは儀式で与えられるという王の宝を探しているのだろう。何の考えも無しに、ボクはマリンの方へ近づいていった。

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