第12話 昔みたいに
配信後はCIOでできることもないためログアウトし、部屋の掃除や洗濯をして時間を潰した。
舞梨さんのとこに来てすぐの時は舞梨さんの服も一緒に洗濯することに気恥ずかしさを感じていたが、今はすっかり慣れてなんとも思わなくなった。
嘘である、洗濯するたびに服や下着の大きさに恐れおののいてる。
……………私がそこまで大きくなることはあるのだろうか?
その日の夜。
いつものように夜ご飯を食べ、食器を洗っていると舞梨さんからお呼びがかかった。
「華月、話があるから終わったらこっちに来てくれない?」
「もう少しで終わるので、ちょっとだけ待っててください」
「わかったわ」
急ぎめで食器を片付け、舞梨さんのもとに行く。
いつも座っている舞梨さんの正面に座ろうとすると手招きをされた。
なんだろうと思いつつ近づくと、腕を引っ張られ脚の上に座らされた。
「舞梨さんこれはいったい?」
「華月、そのままで話を聞いてほしいの」
「あ、はい」
「急なんだけどね、明日から何日か家を空けることになったの」
「何か用事でもできたんですか?」
「実はね…………」
舞梨さんの話を要約するとこういうことだった。
普段から仕事でお世話になっている人が体調を崩して寝込んでいる。
その人には同居人が何人かいるそうなんだけど、誰も家事ができなくて看病ができないという。
だから家事のできる舞梨さんが看病とその同居人の食事を作りに行くことにした。
なるほど、それなら仕方ないよね。
そっちについては理由も聞けたしいいんだけど……………。
説明してほしいことはもう一つある。
「家を空けることになったのはわかったけど、この状況についての説明はないの?」
「……………華月が悪いのよ?」
「うえぇ、私なにかやっちゃった!?」
「あ、ごめん!別に華月が何かやらかしたって訳じゃないの。ただ…………」
「ただ?」
「一緒に住み始めてから一月は経ってるじゃない? それなのに華月ってば、まだ他人行儀みたいにさん付けで呼ぶんだもの」
「うん?」
「だから昔みたいに「まり姉」って呼んで欲しいなぁって思ってたら、華月が小さかった時には脚の上に座らせてたことを思い出してね?」
「それでこうなったと」
「…………うん」
うーむ、そういうことだったのか。
たしかに私が原因の一端ではあるね。
舞梨さん呼びは、男だった頃の思春期に照れくさくて素直に呼べなくてそう呼んでたから、今もそれが続いてただけで舞梨さんを「姉」と呼びたくないわけじゃない。
ということで私が取るべき選択肢はこれしかない。
「………………昔みたいに呼んでもいい?」
「え? うん」
「まり姉」
「っ! もういっかい」
「何度でも呼ぶよ、まり姉」
そう言った瞬間、空気が変わった。
「……………もうダメ、我慢できない!」
「うぇい!?」
突如として息が荒くなったまり姉にお姫様抱っこで風呂場まで運ばれ、あっという間に服を脱がされる。
あ、これは逃げられないやつだ…………。
そう悟った私はされるがままとなるのだった。
お風呂ではめちゃくちゃ丁寧に洗われたし、このあとめちゃくちゃ添い寝した。
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