第10話 これって、もしかして?

 爆弾になりそうな種族などの情報以外、つまりは昨日のログインの周辺探索でわかったことなんかを簡潔に視聴者へと話した。


「というわけで、現状は初期地点の空いているスペースで、翼や尻尾を自然に動かせるように練習することくらいしかやれることがなかったんですよね」


 私の話がゲームとしてはあまりにも問題があるから、コメント欄も途中からは真剣に現状について考えてくれている。


 ・これは初心者じゃなくてもきついぞ…………

 ・バグの可能性は?

 ・それなら早朝の微修正メンテで直されてるはず

 ・そっかぁ

 ・そこから飛べるかどうかは試したの?


「ちょっとだけ試したんですけど、なんか飛行禁止エリア?って表示がでました」


 ・それなら飛んで移動するのは正解ルートじゃないっぽいな

 ・となるとやっぱり怪しいのは洞窟内か………

 ・ログナちゃん、棺桶のあるとこまで移動してもらうことってできる?


 うーん、洞窟内かぁ…………。

 行っても良いにはいいんだけど、ひとつ問題があるんだよね。


「移動するのは大丈夫なんですけど、かなり暗いので皆さんが洞窟内の様子を見れるかどうかわからないんですよね。私は明るい場所と同じように見えるから問題はなかったんですけど」


 ・あー、明るさの問題かぁ

 ・たしかにそれじゃ移動してもらっても………だね

 ・何か手はないのか

 ・うーむ


 そう、明るさである。

 私は『夜目』のおかげで洞窟内でも普通に見ることができるけど、カメラにまではその効果は及ばない。

 そうなると、視聴者からはただただ暗闇を眺める事になるだけなんだよねぇ………。


「どうにかして私が見ているものを皆さんに共有できないですかね?」


 ・視界共有か………

 ・最終手段としてだが配信画面スクショして、明度を上げるという方法はある

 ・カメラ設定でさ、一人称モードにできるか試してくれない?

 ・↑それならワンチ、視点者が見てるのをそのまま映せる!?


 なるほど、カメラ設定ねぇ。

 配信メニューを開いてっと、カメラ設定の視点切り替え…………これっぽいな。

 ぽちっと。


 ・お? 視点が変わったな

 ・一人称モードにはできたか

 ・あとはこれでログナちゃんと同じように見えれば完璧やな

 ・見えるといいねぇ


「それじゃあ、中に入るのでどう見えてるかの報告をお願いしますね?」


 ・はーい

 ・りょーかい

 ・わかりました~

 ・おう


 配信カメラの視点を変えたので、さっそく洞窟への出入口に入り『夜目』を発動する。

 これで私の視界では明るいところで見る感じと同じようになるのだが、はたしてカメラの映像はどうなるのだろうか?


 ・まだ暗いまま

 ・こっちも

 ・あ

 ・明るい! きちゃ!!


 どうやら上手くいったようだった。

 これで洞窟内を視聴者さんにも見せることができるね!


「では、棺桶のとこまで行きますがしばらく歩くことになるので、お喋りしながら向いましょう」


 ・はーい

 ・質問とかしてもおk?

 ・一人称視点での配信はあまりないから新鮮だな

 ・わーい、ログナちゃんとお喋りタイム~!!


 こういうの、なんか実況配信者っぽくてなんかいいよね。

 そんなことを思いながら、棺桶のところまで向かった。



 ~~~



 棺桶のとこまで辿り着いた後は視聴者さんに指示を仰ぎ、コメントに従ってあちこちを見ていたのだが…………。


「まさか、棺桶が微妙に浮いていたとは思いませんでした。それにセーフティポイントかと思ってたらここ、普通にフィルード判定なんですね…………」


 ・ほんとにまさかだよね

 ・これ、バグの可能性がたかいんでね?

 ・いっかい運営に問い合わせたほうがいいかも

 ・このままここに居ても意味が無いしな


 まさかの棺桶が微妙に浮いていた。

 本来なら浮くことが無い棺桶が、わずか3cmほどだけ浮いていたのだ。

 しかもこの棺桶、破壊不能オブジェクトらしく動かすことができないものらしい。

 それだけならちょっとまだ、ちょっと特殊な初期地点で済ませられた。

 だがしかし、オブジェクトやアイテムがどこにも無い。

 尚且つ視聴者さんと調べていてわかったんだけど、この洞窟自体は破壊可能なフィールドであった。

 これらのことから本来の初期地点では無く座標バグにより、初期地点の位置が変わったのではないかということだった。

 これが本当であればリアル二日、ゲーム内では六日分を無駄にしたことになる。

 これはだいぶ痛い…………。


「とりあえず今日はここまでにして、運営にお問い合わせしてみますね。みなさん今日はお付き合いいただきありがとうございました!」


 ・いいってことよ

 ・運営がちゃんと対応してくれるといいね

 ・おつです~

 ・結果報告はどうするの?


「結果報告はできれば次の配信で行いたいですけど、できない可能性もあるのでチャンネルの概要欄にて報告するかもです」


 ・把握

 ・通知オンにして全裸待機しとく

 ・風邪ひきたくないから服は着て正座待機してるわ

 ・普通に待機しろよおまいら


 うん、全裸待機はやめようね?

 今は暖かいとはいえ、風邪ひかないとは限らないしね。


「待機するのはいいですけど、体調は崩さないよう約束してくださいね?」


 ・はーい

 ・わかりました!

 ・ママだ

 ・こんなお母さんが欲しかった


「それでは、今日の配信はこれで終わりです。皆さんありがとうございました!また見に来てくださいね?」


 ・おつ

 ・ばいばーい

 ・乙

 ・絶対見に来るからね!!!!!!!


 最後のコメントラッシュを見ながら配信を終了する。

 累計視聴者数は105人で、最大同時視聴者数は32人だった。

 比較対象がないから多いのか少ないのかはわからないけど、始めとしてはいい方だと思う。

 チャンネル登録者数も58人とそこそこの人数だ。

 自然と嬉しさで笑顔になる。


「次の配信を楽しみにしてくれる人がいるのってなんか嬉しいなぁ…………ってそうだ、忘れないうちに問い合わせ送らなきゃ!」


 余韻に浸かるのも束の間、やらなければいけないことを思い出す。

 公式サイトの問い合わせページをスマホで開き、必要項目を入力して目的の初期地点について確認したい旨の内容を送る。

 これであとは運営からの返答を待つだけ。


 早めに返答が来るといいなぁ…………。

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