第7話 ステータスと現在地 前編

 意識が戻ると、どうやらどこかに寝ている状態だった。

 四方全てに壁らしきものがあり、その狭い空間の中にいるようだ。

 種族名に吸血なんて入ってるから、これはもしかしなくても棺桶だよね?


 腕を動かし現在の状態から見て正面の…………蓋と思われる部分を押し上げてみる。

 かなり重いが動くようだからそのまま横にスライドさせていく。

 途中で蓋の横側に手の位置を変えてさらに横にスライドさせる。

 蓋はそのまま横へと動き、いくらか動かしたところで急にその動きを変えた。

 つかんでいた蓋の横が持ち上がっていく。

 うっかり手を離すと蓋の横はさらに上に向かい、ある程度上がったところでまた進路を変えた。


 ドゴン!!


 物凄い大きな音が響く。

 これはあれだね、蓋が自重で床に落ちちゃったんだね。

 何はともあれ、これで動けるようになった。

 体を起こして辺りを見回す。


 …………うん、暗くて何も見えないね!


 蓋が落ちた方へと視線を向けると、ぎりぎり認識できる程度にしか見えなかった。

 この状態で迂闊に動くのは危ないよねということで、先にステータスを確認することにした。


 ~~~


 誰もいないはずだから気にしなくてもいいのだけど、何となく小声でそれを唱えた。


「ステータスオープン」


 すると、さっきまで何もなかったはずの目の前にホロウィンドウが表示される。

 少しテンションが上がりながらそれを注視するとそこには大きな文字で『必読』と書かれた後にびっしりと文字が書かれていた。


 必読ってことは読まないと大変なことになりそうだよね…………


 ゲーム気分から重要書類を読む気持ちに切り替えて、表示された文字を目で追っていく。

 長々と書いてはいるが要約するとこういうことだった。


 このゲームはスキル制とは言ったけど、普通のスキル制とはかなり違うから先に説明しとくね。

 このゲームでのスキルの定義はその本人が何をできるかの証明、つまりは免許証

 そしてこのスキル自体は多少の補正が付くだけだから有っても無くても大差ないけど、依頼を受けるときとかに信頼度としては影響が出るから有った方がいいのは確かだよ。

 スキルのレベル表記はプレイヤーの習熟度で決まるから、獲得後から高い人も居るかもね。

 PKやNPKはできないわけじゃないけどやらない方がいいよ。

 未遂でもオレンジ判定が入るし、他人を唆して行わせた場合はアカウントの永久凍結だよ。

 凶悪な犯罪者はこのゲームに必要ないからね、積極的に運営が対処するよ。

 オレンジ並びにレッドになったプレイヤーは現地住民にも犯罪者として扱われるよ。

 現地住民とは敵対しない方が良いかもね。

 何が起こるかわからないからプレイヤー以外に協力してくれる存在がある方がいいだろうしね。

 ステータスは基本的に種族特性とスキル一覧、アイテムボックス内のアイテム一覧と装備変更覧、それとログアウトボタンがあるだけだよ。

 人によっては称号も見れるかもね。

 最後にデスペナルティについてだけど、これはかなり重く設定したからね。

 なるべく死なないように頑張ってね。

 それじゃ、運営一同、健闘を祈ってるよ。


 …………うん、要約しても長いなぁ。

 本文はこれ以上に長いのだ、事前に読めるようにしておいて欲しかった。

 まあ、それは百歩譲るとして…………。


「なんでこのゲーム、スキル制を名乗ってるんでしょうかねぇ…………」


 いくらゲームに関わりの少ない生活を送ってきた私でもわかる。

 これはスキル制を名乗ってはいけない、と。

 既存のスキル制ゲームをプレイしてた人たちは阿鼻叫喚の発狂ものではなかろうか。

 知らんけど。


 逆にいい点と言えば、プレイヤー・ノンプレイヤーキラーといった殺人行為や犯罪行為を故意に行う人たちは運営が厳しく対処するそうだから、ゲーム内の治安はある程度は守られるということだろうか。

 これが他のゲームとどれくらい対処に差があるのかわからないから、何とも言えないっちゃいえないんだけども。



 それよりも一番の懸念は最後のデスペナルティの重さだよね。

 VRMMO初心者である私は、死ぬ回数は多くなる可能性が高い。

 デスペナルティの重さによっては実況配信なんてできないかもぁ。

 まあ、いくら考えてもなるようにしかならないのだから気楽にいこう。


 とりあえずは、当初の目的だったステータスの確認からからだね!

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