⑪ 号令準備
はたしてアネモイ2は正しく行動した。
複雑な流線軌道を描きながらアネモイ2と恭介達は回転する風の大槌の隙間を練り、アネモイへと近づいていく。
大槌が抜け去った先では一度破壊されたトルネードの竜が復活し、再びその爪と牙を互いへ突き立てていた。
アネモイは上方約十五メートル。今までで一番近い距離に迫った。
『アハハ! 先代様! この一撃はどうかな!?』
アネモイ2は両手を突き出し、そこに一つの風の球体が生まれた。
そして、直後、その球体に向かって周囲の全ての空気が吸い込まれる!
ヒュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
まるで、気体にだけ働くブラックホールだ。
アネモイ2の下方で風のヴェールに包まれている恭介達もその影響を受け、僅かながら体が浮き上がる。
気体は圧縮され、手の平大の液体へと相転移した!
『さあ、弾けようか!』
そして、アネモイ2は薄い青色の液体空気の球体を放った。
『止めて!』
『hい』
亜音速で射出された液体空気球はアネモイとセリアの前に生まれた空気の壁と衝突し、そして弾け飛んだ!
圧縮され、液状化した空気は瞬間的にその姿を気体へと戻し、周囲へ飲み込んでいた空気の全てを吐き出す大爆発を起こす!
バア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン!
直径にして百メートルを超える大爆発がその場に居る全員を弾き飛ばした!
風の膜によって爆発の衝撃自体は受けない。しかし、恭介達の体は強烈な加速度で下へと飛ばされ、頭に血液が上がった。
ズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキ!
ズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキ!
ズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキ!
ズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキズキ!
脳へと来た負担はそのまま頭痛へと変換され、恭介は右手で頭を押さえる。
その中で、アネモイ2とリンクした開けたままの左眼が上方のアネモイの姿を捉えた。
爆発を間近で受けたアネモイはそのレインコートの裾が破け、頬と腕と脚に裂傷が起きていた。対して、その隣のセリアは目から軽く血を流しているだけだ。
――この爆発で軽傷かよ!
『アハハ! やっぱりぼく達同士だと決定打が無いね! 近寄るほど気体の制御権を奪われちゃう。困った困った困ったよ!』
アハハ!
アハハ!
アハハ!
アネモイ2は笑ったまま再び開いた距離を埋めんとアネモイと突撃する。
正にその時、アネモイ2の視界を通して恭介は気象塔の展望室が
『アネモイ2! 一瞬で良いから気象塔の展望室を見て!』
『了解!』
アネモイ2の視線が展望室へと集中する。
そして、恭介は気象塔の展望室のガラス壁が全て砕かれ、そこに巨大なバネの様な物を従えた京香達の姿を見た。
――来たああああああああああああああああああああああああああああああ!
待ちに待った準備が完了したのだ。
――後はタイミングだ。いつ号令するか。僕の判断で全てが決まる。
『アネモイの動きを止めてくれ! 鈍らせるでも良い! できるか!?』
『ちょっと無理すればできるよ。やる?』
『頼む!』
ノータイムで恭介はアネモイ2へ命令した。多少の無理? そんなものはさっきから既にやっている。
「ホムラ!
「……うるさいわね。分かったわ」
ホムラの胡乱気な返事を聞いた直後、アネモイ2がパンパンパンパン! と拍手を繰り返し、周囲に更なるトルネードの竜が生まれた。
ゴオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!
ゴオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!
ゴオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!
ゴオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!
ゴオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!
『さ、行っくぞぉ!』
アネモイ2は笑い続け、セリアに抱えられ、虚無の表情を浮かべたアネモイがそれを迎え撃った。
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