第83話
「クシナダさんの内に巣食う“あなた”―――“あなた”の内部は
「ええ、全く
かつて“わたくし”は、“わたくし”の世界では【夜の世界を統べし女王】として君臨していた『ニュクス』なる者。 だが“わたくし”の世界で、世界を『我が物』としたい物欲の権化に
「……まさか―――“あなた”が
「判るか―――……そう言う事だ……最後まで抵抗し続けた“わたくし”に
そこで語られた……350年前、この
「なるほど……つまり“それ”が、あの時に語られなかったお前の動機―――」
「判るか?竜吉公主よ……お前と同等の実力を保有する“わたくし”が『捨て駒』の様に扱われた、この恥辱……ああ―――そうだ……“わたくし”は我慢がならなかったのだ!最後まで“あやつ”に
「そう言う事……ね、あの時お前が語っていた『お前自身は私達の敵ではない』―――“これ”が『
“今”にして、ようやく判明したニュクスのあの不可解な言動―――
ニュクスほどの実力者を屈させるほどの実力の持ち主から、強制的に『犠牲になれ』と命令された―――
完全なる敗北を認めた上に、最後までその存在に抗った事の代償はそう安くはなく、別世界―――つまりはこの魔界を、その存在自身の『我が物』とせんが為に尖兵になるよう
けれど、ニュクスに味方はいない―――
これは、
自分の眷属達を護るため、
これでは意味がない―――
許さぬ…………
わたくしは、こんな処で―――こんな…………
見ておれよ…………この
#83;
「残念だけれど……同情は出来ないわ。」
「構わぬ……同情なぞ、元より求めてもいない―――もう“わたくし”は、『死んでいる』も同然なのだからな。」
「『死んでいる』?それはどうして……」
「『リンクを断つ』―――そう言う事ですよ、自己の意思であるにしろ、他者の意思であるにしろ、この人の元いた世界との繋がりを断てば、その時点でこの人の一応の役割は終わったのでしょう……そこを―――この人は逆手に取ったのです。 この人の種属に犠牲を
“敵”の“敵”は―――“味方”……
ニュクスは本来、魔界の敵ではありましたが、自分達に無理
……が―――
話せるだけの事は話した後、一つ―――頬を張る音がしました。
現在に至るまでの動機を話してもらった―――とはしていても、ある一つの事に関して納得いかなかった人物が、
「ふっっ……ざけてんじゃないわよ!だからと言って、こいつの身体を乗っ取ろうなんて、意味が分かんない!だってクシナダは……あんたの
「実に……良いモノを持っているようだな―――【グリマー】……」
「(!)なぜ―――“それ”を?」
「知って?いるわよ……なぜなら、350年前にもいたのだもの。」
「(!)ローリエ様……」
「あの者が持つ“光”は確かに強かった、これならば“わたくし”の本懐も遂げられる……と、思ったのだが、あの者よりもさらに強い“光”を持てる者が
「しかし……それではクシナダを取り込む理由がありませんが―――」
「“光”が強ければ、“闇”もまた色濃く影響を受ける……」
「(!)まさか―――……」
「光と闇は、拮抗し合わなければならぬ。 その一方だけか強まれば、弱いものは呑まれてしまう。 だが、拮抗した“力”と“力”の均衡が取れれば、一つの“力”は相乗効果を
「『乾坤』―――」
「そう言う事だ、竜吉公主……“わたくし”は、この機会を待っていたのだ。
この強力な“光”と同等の“闇”を抱く
『乾坤』の
けれど、それは理論上のものでしかない―――と、思っていただけに、今のこの世に『乾坤』を体現できる者達がいる事など半信半疑だったのです。
しかし……今一つ判らない事と言えば―――
「先程からお前は“あやつ”などと存在性をぼかしているけど……何者なの?」
「それは、おそらく【神】の事だろうねえ―――」
「大天使長ミカエル様―――!」
「(あわわ……はわわ……)―――て……か、【神】ィ?」
「魔界とは違う『別世界』にも【夜の世界を統べし女王】などと
「中々食えぬものだな―――さすがは、
「けれど……【神】―――って……」
「いくら神とは言っても、“善良”なる存在ばかりではない、そう言う事なのだよ……。」
それまでは明言されてこなかった“あやつ”なる存在―――
すると、一体いつからこの場所にいたのか大天使長ミカエルがその存在についての言及をしたのです。
その存在こそ、奇しくも【神】……しかし神にも様々な存在があると言う事をミカエルは
つづく
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