第84話
「ひ―――ひとまず、あんたがやりたいことは判ったわ……けれど、この騒動が終わったら返してもらえるんでしょうね。」
「“わたくし”の目的も、そこで果たせられるからな……目的が果たせたなら大人しくしておいてやる。」
その言葉でシェラザードは安堵したものでした。
確約までしてもらえていないのに、その言葉……だけで、安堵したモノだった―――しかし、そこばかりに浸っている訳にはいかない…そう、現実として魔界は侵略されているのです。
「さて―――ここで抑えておかなくてはならないのは、現在この魔界の主要都市が襲撃を受けている……と、言う事だ。 人族の『マジェスティック』、竜族の『ヴェルドラリオン』、精霊族の『オブビリオン』、魔人族の『コキュートス』……などね、
もし、あの
“
「あれは『率然』―――! フ……フフフ―――“アレ”をこの戦場へ投入するなぞ、力の入れ込みようが伺われると言うものよ!」
「あのような化け物を、存じているのですか!?」
「ああ、存じているとも……“アレ”を、ただの化け物と思わぬがよいぞ。
『其の
『其の尾撃たれれば
『其の
“わたくし”の世界でも特級の警戒危険生物だ、それに……“霜の巨人”フィボルグ―――あれがこの街の攻略担当に任ぜられたか。」
元々同じ世界の住人同士だから戦力の把握は出来ると言うもの。 しかし、彼の者達にしてみれば自らの弱点が露見されている事など露ほども思ってもいないこと。
{
「<偉大なりし風の働きよ、我らの為に大いなる障壁となれ>―――<エアリアル・ウインド・ガード>」
「<七つ色の光の力よ、邪を退ける礎となれ>―――<プリズマ・イリア>」
「フィボルグとやら―――貴様の相手は私だ! ≪フレイム・ストローク≫―――≪ヴァナ・フレア≫」
「<天と地と人に充つる力よ、我に寄れ>―――<灰燼と化せ地獄の業火よ、我が願いを成就する為の礎となりて現出せよ>―――<クリムゾン・ノート>」
まさか
『キサマ……ニュクス! キサマハ……死ンダ―――』
『はず……か?だが、残念だがここにこうして生きておる、さあ選べ―――“生”か“死”か、“生”を選ぶのであれば、“わたくし”の事業に手を貸せ―――だが……』
『残念ダガ……ソレハデキヌ―――』
『―――で、あろうな。 では……死ね、速やかに。』
互いでなければ通じ合わない言語を使い、意思の疎通を図る者達。
そこで知られてしまう事となる、既に亡くなったとされる存在の、“生存”―――
またそれによって、自分達と出身を同じうする者の情報漏洩によって自分達が窮地に立たされたことを知るのでしたが……
「なぜ……処断をしたの―――」
「“わたくし”が生きている事を知られてしまっては、困る……からな。」
「でも―――」
「判ってもらおう……等とは思ってはおらぬ。 “わたくし”は“見殺し”にされたのだ、“見放し”にされたのだ、“見棄て”られたのだ!!ならば―――同じ世界に生きる者達に同等の報いを―――償いを負わせる権利があろうと言うものだ!!」
その心情の吐露を聴いた時、シェラザードはかつての自分の姿を、“
自分の王国―――だとしても、周りには味方の一人もいなかった
そうした孤独を振り払い、仲間信じ合える者達を作り革命を起こした
この人は……どこまで行っても孤独なんだ―――けれど、一人でも解決できるだけの実力を持ち合わせている……
そこの処は判る―――判る……に、しても……力を
「ねえ……教えてくれない、これから起こる―――起ころうとしている事を。」
「第一波は防いだ―――が……フィボルグと率然が
「君ほどの実力者が、そうまで高評価するには、余程の大物のようだね。」
{では、
「いいや、それは出来ないよ―――竜吉公主。 もしそれをしてしまって、伏勢をして防衛が薄くなった処を叩かれてはボク達の無能ぶりを曝け出してしまうことにもなりかねない。」
{じゃが―――……}
「まあ聞き給え。 けれど今回のケースは機会の一つと捉えてもいいと思っている、350年前は準備も儘ならないままルベリウスだけで対処させてしまった―――彼の強さとしての自信の現れもそうなのだが、ボク達の方でも『彼に任せておけば事足りる』と思ってしまったから付け入れられる隙を生じさせてしまった……言わば、あの時の過失は“
{ならばどうしようと―――}
「そこは、考えてあるさ―――あれから……果たしてボク達は何もしてこなかったのだろうか?」
#84;350年前の教訓
侵略戦の“第一波”は、どうにか凌しのぎ切った……とはしていても、その事で侵略側の戦略も見直され、一両日の内にマナカクリムが魔界最大の戦場となる危険性が臭わされ始めたのです。
けれど
「“攻められている”―――からこそ、こちら側としてできるのは『
近い未来、魔界の主戦場になろうとしているマナカクリム―――そこで天使族の長、【大天使長】ミカエルの
「ヴァーミリオン、君達の仲間全員をここへと呼び寄せたまえ。」
「しかし―――ホホヅキは……」
「彼女は、このボクが説得をしよう。 そして君とリリアは最前線で敵を駆逐―――ノエルは敵の陣中奥深く入り情報の収集と共に攪乱を。」
「判りました―――それであなたは?」
「不肖このボクは、この防衛戦の総責任者となろう……そして、各都市の防衛には天使の『
「それは…天使族のほぼ主戦力ではありませんか―――!?」
それだけ、今回の意気込みと言うものが伝わる。
それに、大天使長自身が最終防衛線とは言えど一つの街に出陣してくるなど過去にも例がなかった……
けれど―――“一番”の
それが今―――現出してしまう……
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます