第41話

以前は仲間達が―――そして今度は自身が……彼女達に協力するために一緒に行動をしていました。


そんなときの事……


その日一日の活動を終え、安らかに眠りに就いていた時……


「zzz…… ―――んっ…… ―――ん……?  ぅんぅ~……」


            ――――――ん???


………う、ウソ―――でしょ? コレ…… わ―――私、172にもなって……


安らかなる寝息を立てて野宿でご就寝のシェラザード……


ですがしかし―――?


自分の寝床に異和を感じ、確認してみると   何とも信じられない事―――   シェラザード、御年おんとし172……   その彼女が―――


「|やっヴア~い!地図描いちゃってるうぅ~??《まさかの“おねしょ”?》」


イイ年になって―――とは言うモノの 自覚はない―――とは言うモノの

動かぬ物的証拠がある限りは、認めざるを得なくなっており……

けれども事実、シェラザードの下着も寝床も“ぐっしょり”と濡れており、現行犯であることには疑いようがなかったのです。

とは言え事実は隠蔽いんぺいしなければならない―――そう言う心理が自然と働き、替えの下着と寝床をやり換えよう―――と、した時?!


「(……ん?なんだこれ―――『水溜り』? おっかしいなあ?雨降った形跡ないのに―――しかも、ここら一帯乾燥してるから土が水気を含むのは珍しい……の、に……―――)」


その途端、彼女の眼の端に“何か”が映り込んだ―――



#41;湧き出した“水”の行先は “水”しか知らず



“それ”こそはまさしくの『水』でありました―――

それも『水』が塊となりて“人型”を成し、“流動うご”いている―――?

そして“その物体”が何か念ずると―――現出する『水』……

その時、シェラザードは気付かされたのです。


「(じゃあ……この、“不自然な”『水溜り』はあの“謎の物体”が―――?~に、しても何のために??)」


するとまた、今一つの“謎”―――しかし逆にこちらは知り過ぎるまでに知っていた……


「(背中に―――3対6枚の“翼”??――てことは、『天使』??けど……何で、『天使』と『水の人』が―――??)」


そう……その場で見かけた、有り得ない2つの『謎の存在』……


“水で形成された人型”―――『水の人』と……

“背中に3対6枚の翼を持つ”―――『天使』……


しかし……なぜ―――そんな存在が、こんな場所に?

その事を知るため、もう少し近くに寄ろうとした処―――……


「(ヤ……ばあっ―――!!)」


{そこにいるのは何者じゃ!}

{気付かれましたか……不手際ですね。 〖隆起せよ〗―――〖ライジング・アース〗}


{そなたは―――……}

{エルフでしたか……しかし、我々の為していた事を見られた以上このままには……}

{止めよ―――そなたとて“この者”の価値を知らぬはずはあるまい。}


物音を立ててしまった事で、自分がいる事を知られてしまった―――時、“天使”が唱えた〖土が隆起する魔法〗を行使され、自身の姿をさらされてしまったのです。

けれど、不思議なことに……

“水の人”は、自分の事を知っていた―――?

それに、“天使”が言っていた『我々の為していた事を見られた以上』……とは?

この2つの存在が自分達にも知られないように“何か”をしていたことを知った時、シェラザードを猛烈な眠気が襲ったのでした。


          * * * * * * * * * *


その後―――無事協力クエストを終わらせたことで多額の報酬(100万リブル)を手にするシェラザード……だった―――の、でしたが。

「あの2人の協力を完璧にこなすと、これだけの報酬が!?」

「うん……みたいだね―――」

「どうしたのです。 いつものあなたなら、『チミ達とは出来が違うのだよ~フフン!』と言う具合に自慢気にするものなのに。」

「(~~)私ゃあんたのなかでどんだけヤなヤツなんだよ―――と、言うよりかさあ~なんか釈然としないんだよな~~。」

「どうかしたのです?」

「自分でも気持ち悪い―――と、思ってるんだけど……昨夜の記憶がすっぽりと抜け落ちちゃってるのよ。」

「(……)ただ爆睡してただけじゃないの?」

「なのかなあ……」

例の“自称”ちゃんと厨二病華麗なる勘違い野郎共からの協力を完璧にこなしたことで自分達が受けた時よりも多額の報酬を貰い、“いつも”のように威張り散らかすモノだと思っていたのに―――この塩らしい態度にどこか思う処となったようで、事情を詳しく伺ってみると昨夜からの記憶が無くなっていると言う……それはまた、寝付きが異様にいいこのエルフの事だから『そう言う事』なのでは……と、思ったのでした―――が……


「皆さんお集まりでしたか、丁度良かったです。(ムヒ☆) 私からのお話しを聞いてください。」

「ササラ―――どうしたの?」

「実は昨日、お母上とお話しした事なのですが……」

「ああ―――そう言えばノエル様、あんたを呼んでたけれど……その件?」

「その通りです―――」(ムヒ)

するとここで、ギルドマスターでもある母ノエルからの出頭要請に応じていたササラが戻り、そこで何を話し合ったかが語られ始めたのです。

「実はここ最近、このマナカクリム周辺で不可解な事案が持ち上がりましてね。   この地一帯は皆さんもご存知であるように乾燥をしています、ですから多少の降雨では大地に吸収されてしまうか、大気中に蒸発してしまう……けれどあなた方もご存知であるように“あの一件”だけは『特別』であったと言えるでしょう。」

「ええっ?!」

「まさか……“あの2人”の??」

「はい……私もその時点で気付いておくべきだったのでしょうが―――私達の身に降りかかってしまった“火の粉”に捉われるがあまりに見逃してしまった―――と、言わざるを得ないのです。」

「確かに……あの時、私達が使用したスキルの数々をあのアクアマリンの軽装剣士が全て台無しにしてくれたのよね……。」

「あレ?でも、私ん時にはあんた達が言っていたような“妨害行為”はなかったよ?けど……そう言えば―――“水溜り”や“ぬかるみ”は不自然なまでに多かったよう………な?」

「シェラさんの、その証言が正しければあなた様が彼女達と協力するに際し“妨害をする必要”がなかったからなのでは?つまり、『何かしら』をする為の“事前準備”は私達の時点で完了させていた可能性が高いですね。」

「……あら?ではなぜシェラは協力できたの?ササラが言ってた事が正しければ、シェラが協力する必要なんて……」

「ああ―――それな、ちょいと“ガツン”と言ってやったら向うも『いいよ』と言ってくれたからさ。」

「シェラ様……感情的になると、言葉に“凄味”が増しますからね……。」

「シルフィくぅ~ん~?後で個人的に話し合おうかぁ? ま……それはいいんだけど―――そう言えば『アンジェリカ』―――ての、妙に引っ掛かる事を言ってたのよねえ~。」

「引っ掛かる事?」

「それ……って、どんな?」

「う~~んと……確か―――『これである程度、判ってくることもあるから』———だったっけかな?」

「(!)すると、何かの調査をしていたと言う事なの?」

「そこだけを聞くと、そう捉えられますね……。」


「(……―――)」


「どうしたんだ?ササラ―――」

「今一度、地図で確かめてみましょう。」

「“確かめる”……って、なにを?」

「この周辺で確認された“水溜り”や“ぬかるみ”―――と、この度母上から確認をお願いされた、不可解な死に方をしている『魔獣の遺体の位置』とをです。」

それは、いまだ原因が掴めていないから、本来ならば仲間内であっても公表すべき事柄ではありませんでした。

……が、ササラは自身が信を置いている仲間だから―――と、敢えて公表することにしたのです。


しかし、そこで知れる事となる―――『不可解な死に方をしている、魔獣の遺体』……


「(え……っ?!)『不自然なまでに“押し潰され”』、『不自然なまでに“水分が失われ”』、『不自然なまでに“斬り裂かれ”』、『不自然なまでに“捩じ切れ”』―――ていた??けれど、そんなものは私達の時でさえ……」

「しかも、その魔獣の殺され方に『水』が関与している容疑うたがいがでてきたのです。 それに、やはり……『魔獣の遺体』と『水溜り』『ぬかるみ』の位置とが合致しています。」

「コレって―――!?」

「まだ確定するわけには参りませんが、私のなかでは少なくとも……“神”の域に近しい存在が自らの『権限チカラ』―――そう……言うなれば『水の権限』を行使した結果だと思われるのです。」






つづく

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