第72話本心

「うるさいぞ!ちょっと黙ってろ!」


部屋を出ていこうとする大臣達に王子は声を荒らげた!


「しかし…王子」


「側近を決めるのは俺だ!そして俺はこいつが気に入った、変更は認めない」


「いいのですか?」


私は驚いて王子を見つめた、まさか気に入るなどと言われるとは思っていなかった。


「男に二言はない!」


ふーん…結構面白い王子なのかもしれない。


「王子!考え直してください、そのような考えの者などそばに置いておいていい事などありませんよ」


「そうです!側近ならもっと有能で従順な者がいくらでもいます」


「おっとその発言は聞き捨てならないですね、うちの子よりも優秀な子はこの年ではいませんよ」


「お父様…」


「本当の事だ」


お父様の親バカが空気も読まずにこんなところで出てきた。


「なら問題ないな、有能で自分の意思もある。俺は自分の意見を持たないやつは嫌いだ。これからよろしく頼むぞテオドール」


王子が手を差出してきた。


「はい、グレイ王子…側近としての役目は全う致します。これからよろしくお願い致します」


まだ不満そうに顔をしかめる大臣達を無視して王子と私は固く手を握りあった。


そしてグイッとそのまま引き寄せられると…


「あと、テオドールの一番大切な奴にも会わせてくれ」


王子はそういうとニカッと笑った。


「はい、お断り致します」


私は当然と言うように笑ってそれを却下した。



挨拶も終わり、王子とは学園で再び会う事となり今日の王子との謁見は終了した。


帰りの馬車の中…私はお父様に向き合うと…


「お父様、無事に王子の側近にはなれましたが…あのような発言、申し訳ありませんでした」


「うん?ああ、テオドールなら言うかと思っていたから…マリー命だからね…」


お父様が苦笑する。


「気持ちはわかるから大丈夫だよ、何かあればフローラ達と逃げる用意もしていたし、まぁその前に国王には話を付けてあったからあの爺共が何を言っても変わりはしないよ」


「さすがお父様です…私も見習わないと」


お父様があんなに落ち着いていたのはそういう事かと関心する。


「王子に付いてきていた大臣達は、あわよくば自分の息子や娘を王子にお近づきさせたい強欲な奴らだからね、テオドールが何を言っても文句を言ってきただろう」


「そうですか…よかった。王宮の人達が皆あんなのかと思い幻滅する所でした」


私は心底ほっとすると


「はは、まぁやはり膿は出るものだ。こういう時に出てきやすいから逆に利用して一掃するんだよ。テオドールがあんなに挑発してくれてかえって助かったよ」


「いえ、私は本心を話しただけです…では王子もあれは演技ですか?」


「いや、王子には何も伝えてはいないよ。彼が許したのも本心だ」


お父様がニンマリと笑った。


「王子とテオドールは案外相性がいいかもしれないね」


「そうでしょうか…」


それよりもマリーと相性がいいと言われる方が嬉しいな…


そんなことを考えながら…そのマリーが待つ家へと帰って行った。

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