第71話王子

馬車に乗ってしばらく走ると街の中央に城が見えてきた…そして門に着くと御者が門番に書類を渡すと問題なく王宮へと足を踏み入れた。


馬車を預けてお父様の案内で王宮内を行き、王子との対面の部屋へと向かった。


「じゃあここで少し待っていてくれ」


お父様が開けてくれた扉を通って部屋へと入ると待っているように指示をされる。


私は頷くとこれから仕えることになる王子を待った。


程なくしてお父様が戻ってくると…今から来るからと言われて無言で頷く…いよいよかと覚悟を決めると部屋を叩く音がした。


「おまたせ致しました」


大臣と思われる数名と兵士、従者が入って来るとその後ろから自分と同じ背丈ほどの男の子が入ってくる。


なるほど…あれが王子か…確かに容姿は整っている。


幼いながらも均等なバランスの顔に、サラサラの金の髪、傷など一つもない健康的な肌に整った眉。


王子と呼ぶにふさわしい男の子が自分の前で立ち止まった。


「ふーん…お前がテオドールか」


じっくりと舐め回すように上から下まで見つめられる。


そして最後に目を見るとニカッと爽やかな笑顔を見せた。


「グレイ王子、アンスロット伯爵家の長兄のテオドールと申します。これからよろしくお願い致します」


王子の反応はスルーして自己紹介をすると王子に深く頭を下げた。


「ああ、よろしく。これからは常に一緒に居るようになると思うからな、よろしく頼む」


「それは…了承しかねます」


「はっ?」


「テオドール!」


私の答えに王子は口をあんぐりと開けて、お父様が窘めるように声をかけてきた。


「すまん…今幻聴が…なんか了承しないって言われたような」


王子がわざわざ聞き返してきた。


「いえ間違っていません、そう言いました。私には王子よりも大切な人がいます。もちろん仕事として王子の事は守り助けますが一番ではありません」


「こいつ…」


王子に仕える従者が拳を握り睨みつける。


「こんな不敬な発言…側近にはふさわしくないのでは?」


「これはどういう事でしょうか、アンスロット伯爵」


王子の後ろに控える従者や大臣達がお父様と私を冷めるような目で見つめてきた。


「いやぁ…なんと言うか、どうも私の息子は嘘がつけないようで」


お父様が困った様に笑った。


「何を笑っている!これがどういう事かわかっているのか!?」


大臣達がさらに声をあげると…


「あはは!お前面白いな!」


王子だけが楽しそうに笑っている。


「王子!笑っている場合ではありません、これは国王にお話して側近を新たに変える必要がありそうですね」


大臣が早速と動き出した。


まぁそれもいいかもなぁ…変な役職がなければマリーのそばに入れるし、権力を持つのはは違う方法でも構わない。


ただ気がかりはお父様の顔に泥を塗ってしまうこと…


チラッとお父様を伺うと…


「ん?ああいいよ。テオドールが選んだ事を私は応援するよ」


お父様は気にした様子もなく私の頭に手を置いた。

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