第12話お兄様

その日からテオドールがちょこちょことマリーの部屋を訪れるようになった…


自分の勉強の合間や…何か嫌な事があった時など、こっそりと来ては私に愚痴をこぼしたり、ただ黙って顔を見て帰ることもあった。


まだあんなに小さいのに勉強とは偉いなぁ…どうやら長兄だから学ぶ事も多いみたいだ。


しかもテオドールは結構優秀らしく、トーマスさんなどよく褒めている。


そんな大変な兄に私は笑顔を向けてやる事しか出来ない…ごめんよ…頑張ってくれ!


今日もテオドールは勉強の合間にマリーの元を訪れた…しかしこの時はフローラもいてマリーはちょうどお食事中だった。


テオドールはフローラ様がマリーにミルクをあげている所に出くわすと…


「あっ…」


気まずそうな顔をして


「申し訳ありません…」


引き返そうと扉を閉じようとすると


「テオドール様、最近マリーの御世話をしてくださっていると伺っていますわ。よかったらもう少しゆっくりして言ってください」


フローラはテオドールに笑って声をかけた。


「いいんですか?」


テオドールは驚いてフローラを見つめた。


「ええ、だってテオドール様はマリーの兄様ですもの、可愛がって下さり私も嬉しいです。そうだ!よかったらミルクをあげて見ませんか?」


フローラはおいでと優しくテオドールに手招きする。


テオドールはそっと伺うように近づくと、リアズがフローラ様の横に椅子を用意した。


テオドールが座ると


「少し重いですが大丈夫ですか?」


マリーを膝に乗せようとすると


「鍛えておりますから、マリーくらい大丈夫です」


コクンと頷く。


フローラは笑ってそっとマリーをテオドールに預けると


「ここをしっかりと押さえて、ミルクを口に…あとは食いしん坊のマリーが勝手に飲みますからね」


優しく微笑む。


ママ酷い!まぁ確かに食いしん坊だが…あんまりにもママのおっぱいを飲みすぎて最近ミルクに変えられてしまったので大きな声で文句も言えない。


大人しくテオドールのミルクを待っていると、たどたどしくテオドールがミルクを差し出して来た。


待ってました!


かぷっ!


哺乳瓶を咥えるとゴクゴクとミルクを飲み出す!


夢中になってしまい、ミルクを持つテオドールの手を掴みながら飲んでいた。


テオドールはそんな美味しそうミルクを飲むマリーをずっと見つめていた…


ふぅ~もう満足…げっふ!


お腹いっぱいミルクを飲んで満足した私はふぅと息を吐くと


「もういいのか?まだ飲んでもいいんだよ…」


テオドールはふっと微笑んでマリーに声をかけた。


いつもの礼儀正しい言い方ではなく優しい兄の様な喋り方にマリーは既視感を覚える…


あれ?この感じ…


じっとテオドールを見ているとテオドールがマリーの視線に優しく微笑んだ。


その瞬間ある映像が頭をよぎった!


テオドール!!そうか!あのBLゲームの攻略対象だ!


何度も何度も繰り返し見たチュートリアルや攻略対象の説明映像!王子の側近で頭がよく優秀…しかし性格は冷淡で笑う事が少なく、好感度をあげると主人公にだけ見せてくれる甘い笑顔に始まる前からファンをたくさん作っていた!


もう一度テオドールを見ると…まだ幼いがあの映像と同じ甘い笑顔がそこにはあった。

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