MADサイエンス研究所(2) マリアンヌ
約束の時間の午前十一時になると、一階中央の食堂らしき場所に徐々に人が集まり始めた。集まってきた人の多くは、三十代から五十代の男性のようだが、中には和服を着た老人や明らかに日本人ではないとわかる人も混じっていた。辺りを見回していた黒田が何気なくエレベータの方を見ると、エレベータの扉が開いて、中からファッションモデルのようにスタイルが良い女性が現れた。黒田の目は、その女性に一瞬釘付けになった。エレベータを降りたその女性は、わずかに微笑みながら会釈して赤城と黒田の横を通り過ぎた。
「こんにちは、レイコ」
「ヒトミさん、こんにちは」
「ハロー、マリー」
その女性が近づくと、周りの男性陣が口々に挨拶した。
「お
「ところで、レイコ? ヒトミ? マリー? 一体どれが彼女の本当の名前ですか?」赤城が不思議に思って青山に尋ねた。
「すべて本当です。彼女はアメリカ国籍で、フルネームでは人見=マリアンヌ=麗子と言います。お父さんが日本人でお母さんがアメリカ人です。もうおわかりですよね」青山が言った。
「それで納得しました」赤城が言った。
「前回の誘拐事件では、彼女も協力してくれました。彼女には後で話を聞くことにして、まずは副所長のお話を聞いて下さい。もうすぐこちらに戻ると思いますので」青山が赤城と黒田に言った。
「あのぉ、前回の誘拐の件は、限られたごく一部の人しか知らないはずなのですが・・・・・・」赤城が不満げに青山に向かって言った。
「そのことでしたら、この研究所内では食堂のおばちゃんを含めて全員が知っていますよ。もちろん、その情報が外部に漏れる心配はありませんので、ご心配なく」と青山がこともなげに言った。
「ここにいる全員ですか?」思わず赤城と黒田が顔を見合わせた。
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