プロローグ・終わりと始まりの日(5) ワイドショー

 朝の情報番組が今日の放送を終了し、ひと段落してくつろいでいた番組担当ディレクターのもとに、報道フロアから新しいニュースが入ってきた。殴り書きされたメモには、川崎市の交差点で起きた痛ましい交通事故のことが書かれてあった。交通事故の内容は、東関東テレビのベテランアナウンサーによって朝十時のニュースで伝えられた。ディレクターも近くのテレビモニタでニュースを見ていた。

「今朝七時半ごろ、川崎市内の交差点で複数の歩行者を巻き込んだ交通事故が発生しました。死者二名、足の骨を折るなどの重傷者が五名、他にも数名の軽傷者がいる模様です。運転していたのは八十五歳の高齢者で、ブレーキを踏んだがブレーキが利かなかった、と話している模様です」

 幼児誘拐が解決した明るいニュースの後に、悲惨な事故のニュースを耳にしたディレクターは、暗澹あんたんたる気持ちになった。しかし、ディレクターは一瞬で気持ちを切り替えて、何か思いついたように午後二時からの情報番組のスタッフたちに指示を出した。

「今日は高齢者の運転事故に関する特集に切り替えるぞ。あと三時間しかないから、急いで準備しよう。番組の構成は俺が考える。まずは、リポーターを事故現場に派遣しろ。できるだけ目撃者の証言を集めて来てくれ。それから・・・・・・」

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