閑話休題
デザートは一部外注でございます
不意に、勝手口が開いた。手が離せない勇貴の代わりに真美が伺い、すぐに悲鳴を上げて扉を閉める。
「何事でございますか!」
「楓ちゃん、大変! 外にガラの悪そうな人が!」
真美が涙目で指差す勝手口が再度開き、男性が顔をのぞかせる。
「及川勇貴はいるか?」
「むっちゃん?」
勇貴は声を聞いただけで、来客を判断する。
「むっちゃん、ありがとう。休んでいってよ。真美ちゃん、デザート受け取ってくれるかな」
真美は、震える手を伸ばし、男性からクーラーボックスを受け取る。
「貴女殿、久しいな」
「お久しぶりでございます」
楓が冷蔵庫から麦茶を出してグラスに注ぐと、男性は立ったまま一気に飲み干した。
男性の名は、
「久々に山梨まで行った。あそこは水も果物も、信州とは一味違う」
「へえ。俺も行ってみたい。忍野八海の水でコーヒーを飲んでみたいんだ」
勇貴はデザートを切り分け、盛りつけながら言葉をこぼす。楓と真美は、デザートの断面に釘付けだ。
「よし。準備オッケー。楓ちゃん、先に温かいものを運んでくれるかな」
勇貴のゴーサインで、楓は最後のデザートを運ぶ。
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