第2章 四大魔法学院対抗戦 後編 四十二話 エピローグ


『試合終了! 決勝戦を制したのはアストレア魔法学院、魔力結晶破壊により勝利! 四大魔法学院対抗戦優勝だぁ! 』


 勝敗を告げる放送が俺達3人の耳に響く。


「何とか勝てたようだな」

「だな、今日ぐらいは労ってやるか」


 そんなことを俺とダリスが話していると近くに転移門ゲートが開きアリシア様に支えらたレオが出てくる。


「「「レオ(レオ君)!」」」


「皆、ただいま」

「ただいまって、お前どうしたんだ!?」

「大したこと無いんだけど少しフラフラするだけだ」

「何かあったの?」


 サリーがそう聞くとレオから決勝戦の間にあったことについて説明された。


「なるほどな、急激に魔力を消費した反動で今そうなってると言うわけか」

「まぁ、だいたいそんな感じ。起きた直後は大丈夫だったんだけど試合が終わった後に気を抜いたら少しふらついちゃってさ」


 そう言ってレオは笑っている。


「全く、笑い事でもないんだがな……とりあえず今は演習場に戻るぞ、この後の表彰式までは時間があるからな少し休めば落ち着くだろう」

「そうだな、かなり疲れたし今は少しでも休みたい」


 そうして俺達は大森林の隣にある演習場まで戻った。ちなみに、レオはランドに担がれての移動だ。


「なんか俺の扱い雑じゃない!?」

「ランドの毛並みは絨毯よりも良いからな。担がれ心地は最高だろう? それに、それだけ喋る元気があるなら心配しなくても良さそうだな」

「お前は鬼か!」


 何やらレオが騒がしいがこれだけ元気ならすぐに回復するだろう。



 ◇◆◇◆◇◆



 あの後、俺達は控え室に戻り第3位決定戦であるセイクリッド学院対ブランハーツ魔法学院の試合を観戦していた。

 結果はどちらの学院も魔力結晶を破壊することは出来ずに時間切れ、戦闘不能者の少ないセイクリッド学院が勝利となった。


 これで全学院の順位が決定し今試合をしていた2校が戻り次第表彰式を行う予定だったのだが、予想以上に疲労した生徒が多く少しでも長い休憩をと言うことで表彰式は夜の会食と同時に行うらしい。


「会食の時間まであと2時間、お前らしっかり休めよ」


 メルト先生はこの後の日程について説明するとそう釘を指して控え室から出ていった。今から夜の会食の準備を手伝ってくるらしい。


「あの人、本当はこういうの苦手な性格だろうに大変だな」

「聞いた話によると何度も断ったけど学院長がしつこくて折れたらしいよ」

「後は学院長に借りがあるから受けたって言う話も聞いたな」


 一体どの噂が事実なんだろう? それとも噂の中に事実は無いのか?


「まぁ真意はともかく仕事となればしっかりやる人だ俺達が心配するようなことでは無いだろう」

「それもそうだな」

「それよりもレオ君は起き上がらずに休んでいてください! いくら回復魔法をかけたからと言って外傷や内傷ではないんですから!」


 体を起こして話しているとアリシアに怒られてしまった。ここは大人しく言うことを聞いておこう。


 その後も談笑を続けていると時間はあっという間にすぎていき会食10分前にメルト先生が俺達5人を呼びに来た。


「おーい、お前たちそろそろホールに行くぞ」


 メルト先生に連れられホールまで行くとそこには昼食の時よりも遥かに豪華な料理の数々が並べられていた。


「これはすげぇな、昼よりもレベル高いんじゃねぇか?」

「どれも高そうなものばっかりだ」

「お前ら、あんまりはしゃぎすぎるなよ。特にレオ、お前は病み上がりってことを忘れるな」


 その後、他の3校もホールに集まったことで表彰式を兼ねた会食が始まった。



 ◇◆◇◆◇◆



 表彰式兼立食パーティーも終わり俺達は荷物を持ち帰路についている。と言っても既に夜も遅く、今日は昨日も泊まった兎の尻尾亭に泊まり王国には明日の早朝に帰ることになった。

 兎の尻尾亭に着くとヒルテおばさんに昨日と同じ部屋に案内される。


「ふぅー、疲れたぁ〜」

「安心するのはまだ早い、旅行は帰るまでが旅行だからな」


 部屋に着き俺がベッドに飛び込むと、アレクがそんな事を言ってくる。


「なんだそれ、それに今回のは旅行と言うより遠征に近いだろ」

「なに、例え話だ。まぁこの2日間でかなりの体力を使ったからな、少し気を抜いたっていいだろう」


 そう言ってアレクも荷物を部屋の端に起き、ベッドに座る。ちなみにダリスの奴は部屋に入ってすぐに日課の筋トレを始めていた。


「ほんと、この2日間だけでいろいろあったよな……」


 特に、今日見た夢の中での出来事。俺にとってはあの中での事が1番濃い出来事だった。一体あそこでであった光は何者なんだ?


「そうだな、だがこの対抗戦で戦闘面にしろ精神面にしろ皆確実に強くなった。それは事実だ」

「あぁ、俺もそう思うよ」


 謎は多いけど、あいつから教えて貰った新しい魔法は確実に俺の力になる。

 分からないことだらけで地道に知っていくしか無いけど、出来ることが増えたのは決してマイナスな事では無いはずだ。


「とりあえず振り返るのは明日にするか、俺は疲れたしもう寝るよ」

「あぁ、それがいいだろう。ダリスも早く終わらせろよ」

「おう、残りは腕立て100回だけだからな3分もあれば終わるぜ!」


 そうして俺とアレクは一足先にベッドに入った。


 翌日、約1名眠そうな顔をしながらも5人全員集合時間に間に合い宿の前に止めてある馬車に乗り込んだ。


「レオ君、あまり眠れなかったんですか?」

「あぁ、誰かさんのお陰でね」

「?」


 あれは地獄だった。日課の筋トレを終えたダリスが少し経った後にベッドに入ったかと思うと光の速さで寝ていびきをかき始めた。

 その破壊力たるやまるで地雷が爆発した時の様な音だったな、地雷の音聞いたこと無いけど。


「お前はよくあの中寝れたよな」

「お前は先に寝て気づかなかったと思うが1日目も同じだったからな。そうなるとわかっていればいくらでも対策のしようはある」


 そう言ってアレクは土魔法で岩の耳栓を作りだした。

 こいつ、俺にも作ってくれたって良くないか!?


 そんな事もありつつ馬車に乗った俺達は何事も無く無事にルステリア王国まで帰った。

 もちろん俺は馬車の中でしっかりと寝たよ?


 こうして、俺達にとって濃密な対抗戦は終わり、また明日からいつも通りの学院生活が再開する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る