第2章 四大魔法学院対抗戦 後編 二十六話 勇者と遭遇しました。


 ――時が遡ること数分前、レオ達がサリーの元へ走り出してすぐに3人の前に白い制服を着た男女が2人現れた。


 この制服、セイクリッドの残りの2人か……


「やぁ、絶好調みたいだね。アストレア学院」


「これはこれは、セイクリッドの方々が揃ってどうしたんだ?」


「何、君たちにもチームメイトが1人やられているからね。少し挨拶をしに来ただけさ」


「悪いが今は急いでいるんだ。挨拶なら後にしてくれない?」


「そういう訳にはいかないさ、担任から常に礼儀正しくと言われているからね」


 まぁ、そう簡単には通しちゃくれないよな。


「全く、面倒な奴に絡まれたな」


「それは酷いな、せっかくの縁だ仲良くしようじゃないか」


「シン、お喋りはその辺にしておいて」


 シンと呼ばれた少年は頬をかいて少し笑う。


「あぁ、ごめんサヤ。そうだね、そろそろ始めようか」


 そう言ってシンは腰に指した剣を抜く。その剣は眩い輝きを放っており見ただけでかなりの強さだと分かる。


「『閃光の聖剣 クラウソラス』神々が作ったと言われる伝説の聖剣。その輝きは希望の象徴であり勇者の証、その聖剣が選んだ人間がシン。稀代の勇者 シン・ドラグリア」


 サヤと呼ばれた少女が話す。


「僕としてはあまり目立ちたくは無いんだけどね」


 どうやらこの男もアレクと同じで自分の2つ名については少し名乗りづらいようだ。


「それじゃあお喋りはこの辺にして行くよ、えーと……ごめん、君の名前聞いていい?」


 こいつ、今から戦うって言うのにそんなこと聞くか!?


「俺の名前はレオナルド、レオでいいよ」


「レオか、よろしく!それじゃあ改めて行くよ!」


 そう言ってシンはクラウソラスに魔力を込め振り切った。その斬撃は纏いレオ達に襲いかかる。


 これは光魔法!不味い、2人は雷魔法が使えない。助けられてもどちらか1人……


「ダリス!自力で避けろよ!」


「おう!」


 レオは光魔法を体に纏い隣にいるアリシアを抱えて斬撃の攻撃範囲から逃れた。ダリスはと言うと……


「グォォォッ!」


 ランドを自身の後ろに召喚し体に身体強化をかけ手に土魔法を纏わせることで何とかシンの攻撃に耐えていた。


「あれ、結構強めにやったんだけど。君、なかなか強いね?」


「正直驚いたが光魔法には目が慣れてるんでな」


 そう返すダリスだが息切れをしており今の一撃を防ぐのにかなりのダメージをくらったようだ。


「大丈夫か、ダリス」


「何とかな、だが今のでかなりのダメージを貰っちまった。少し休まないと戦闘は無理そうだ」


「わかった、後は任せろ。アリシア、ダリスを頼む」


「はい、任せてください!」


 そしてレオはシンの方に向き直る。


(とは言ったものの、あの攻撃を吸いきるほどの闇穴ダーク・ホールとなると結構魔力を使っちゃうしな)


「とりあえず、あの攻撃は壊して防ぐしかないか……」


 そう言ってレオは2本の剣、白夜と黒影を抜く。


「準備は出来たみたいだね」


 シンもレオが剣を抜いたのを見てクラウソラスに再度魔力を溜める。


「お陰様で、なっ!」


 レオは言葉が終わるのと同時に光魔法を纏いシンに距離を詰めた。


「ふっ!」


 距離を詰めたレオは右手に持った黒影を大きく振りかぶり短く息を吐いて振り下げる。


 ガキィィィィンッ!


 シンはレオの攻撃を右手に持つクラウソラスで受け止める。2本の剣が衝突した瞬間に高い金属音が辺り一帯に響き渡る。


「さすがに、この速さじゃ着いてこれるか」


「僕も一応光属性を使えるからね、それに」


 シンは更に魔力を込めレオの攻撃を弾き返す。その時レオははっきりと見た、クラウソラスの周りを電流が流れているところを。


「まさか、お前!」


「あぁ、僕は光と風の2属性持ちだ。基本は光と雷しか使わないんでけどねっ!」


 シンは弾き返した事により隙が出来た所を見逃さずすぐに追い打ちを仕掛ける。


「『聖剣の一撃セイント・スラッシュ』!」


「グァッ!」


 その攻撃をレオは避けることが出来ずに直撃してしまう。


「レオ君!」


 アリシアが膝を着いたレオの元へ駆け寄るがレオは何事も無かったかのように立ち上がった。


「レオ、君?大丈夫なんですか?」


「あぁ、何とかな。あいつの強さに助けられたよ」


「それってどう言う……」


 アリシアは何が起きたのかわかっていない様子でレオに聞くが、それに応えたのはレオではなく攻撃した張本人シンだった。


「なるほど、闇魔法で僕の魔法を吸収したんだね」


「その通り。さっき少し剣を合わせてすぐにわかったよ。お前の剣の腕はかなりの努力をしないと身につくものじゃない。だからその剣の性格差を逆に利用させてもらった」


 そう、レオは攻撃を食らう直前に剣の軌道にあわせて闇穴ダーク・ホールを発動していたのだ。


「なるほど、道理で手応えが無かったわけだ」


「で、でも! レオ君さっき膝を着いていたじゃないですか!」


 アリシアの言う通りレオは先程の攻撃で確実にダメージを受けていた。


「まぁね、俺の闇魔法は魔力を引き寄せ吸収するだけで剣自体の推進力を無くせるわけじゃないから。さすがに剣の衝撃はかなり食らったね」


「もう! レオ君がやられちゃったかと心配したじゃないですかぁ!」


 そう言ってアリシアはレオの体を叩き始める


「ご、ごめん!次からは気をつけるから!だから落ち着いて?ね?」


 レオは何とかアリシアを宥める。


「ははっ、仲がいいんだね」


「そうか? いや、そんなことよりも悪かったな戦闘を中断させちゃって」


「いや、いいさ。今回の対抗戦は各校の交流も兼ねてるんだしね」


 そう言ってシンは優しく笑う。


「そうか、それじゃあ改めて行くぞ!」


「あぁ、来い!」


 そうしてレオとシンは再度剣を交える。


「またシンの悪い癖が出てる……」

 

「お互い苦労しますね……」


 そうして2人を見守る女性陣はお互いに苦笑いをするのであった。


「レオの奴、完全にサリーの所に向かってたの忘れてやがるな……仕方ない、アレクに頼むか」


 そうしてダリスがアレクに通信をしサリーの元にはアレクが行くことになったのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る