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 その淡く光る白い光の正体は、……一匹の白い蛇だった。

 その蛇は小柄な蛇だった。(たぶん、大きさからして子供の蛇だろう)

 真っ白な、闇の中でもなぜか不思議と淡く白く光る鱗を持った不思議な蛇。……その蛇はやっぱり不思議な『真っ赤な目』をして、その闇のところから、近づいてきたみちるのことをじっと見つめ続けていた。

 みちるは蛇が嫌いだった。

 でも、このときは不思議と全然怖くはなかった。それは、この不思議な現象が、自分の夢の中の出来事だとわかっていたこともあるかもしれないし、あるいは蛇が白く光る赤い目をした珍しい(もしかしたら縁起物かもしれない)蛇であったこともあったのかもしれないし、蛇が子供の蛇であったからかもしれないし、……あるいは、その蛇が力なく闇の中に横たわっていて、もう死にかけているような、……そんなずいぶんと力のない状態の蛇だったからなのかもしれない。

 理由はよくわからない。

 でも、とりあえずみちるはその白い蛇のことが気になった。

 だから、じっとみちるは蛇から少しだけ距離をおいたところに立って(それでもやっぱり、いきなり最後の力を振り絞って、蛇に飛びかかられることはちょっとだけ怖かったので)その蛇のことをじっと観察していた。

 蛇はぴくりとも動かずに、ただじっと、そんなみちるのことを、不思議な赤い目を向けて、……ずっと、見つめ返していた。

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