85 私と手紙
「かっ、かっちゃん!!えっ?これはどういうこと?」
私が驚いていると、かっちゃんに押さえつけられていた人が私に助けを求めるように、涙目でこちらを見て言ったの。
「シズヤお嬢様!!助けてください!!これは誤解なのです!!我が主から、シズヤお嬢様からの返事を頂くまでは戻ってくるなと……。それで、外で様子を見させて貰っていただけなのでございます!!決して、邪な心があって、覗いていたのではございません!!」
まだ、手紙の内容すら見ていないというのに……。
どうしたらいいのか分からなかったけど、取り敢えずその人を離してもらうようにしなければと考えて、かっちゃんに言ったの。
「えっと……、取り敢えず、その人を離して貰えないかな?悪人には思えないし?」
そう言って、かっちゃんにお願いすると渋々といった感じではあったけど、男の人を離してもらえた。
手紙の返事はできるだけ急いだほうが良さそうだと考えた私は、手に持ったままだった手紙をその場で開封することにした。
封を切っただけだったけど、なんだかとても甘くていい匂いがした。
手紙を取り出すと、綺麗な花の透かしの入った可愛らしい便箋にキレイな文字でつらつらと連ねられた文字を目で追った。
シズヤへ
初めまして、私はセレフィン・フェールズといいます。
私は、貴方の流す美しい涙を見て、貴方こそが私の運命の人なのだと感じました。
貴方を私の妻に迎えたいと思います。
もし、今現在、好きな人がいないのでしたら、私との未来について真剣に考えて欲しい。
必ずや貴方を幸せにしてみせると誓います。
手紙には、そんな事が書かれていた。
これは一体どういうことなのだろうと、首を傾げていると、後ろにいたはずのアーくんが声を上げていたのだ。
「なっ!!これって、第二王子直々の婚約申し込みじゃないですか!!」
「な!」
「はぁ!!!」
「え?」
ヴェインさん、かっちゃん、私とそれぞれが驚きの声を上げていた。
まさかの婚約の申込みに驚きつつも、会ったことのない人との婚約だなんて……、そんな事を考えていると、ヴェインさんが頭を抱えるようにして唸っていた。
「あぁあーー、ベルディアーノ王国でシズを救出した時に見初めたってことか?クソ……、油断した。アーク、手紙にもしかして、涙が綺麗とかそう言った言葉はあったか?」
「えっと、ありましたが……、それが何か問題なのですか?」
アーくんの答えを聞いたヴェインさんは、表情を引きつらせてから私の手を掴んで言ったのだ。
「シズ、手紙の主は、この国の第二王子だ。あいつは……、あいつは……。シズ、俺と―――」
ヴェインさんがそこまで言ったところで、玄関のチャイムが鳴った。
ピンポーン
それを無視するように、息を吸ったヴェインさんは、気を取り直して続きを言おうとすると……。
「シズ、俺と―――」
ピンポーン。ピンポン。ピンポンピンポンピンポンピンポンピポピポピポピンポーン。
物凄い連打をされてしまった。
「あの……、出たほうが良さそうなのですが……」
あまりの連打に、私がそう言うと、ヴェインさんに視線を向けられたアーくんが、頷いた後に玄関を開けて驚きの声を上げていたのだ。
「えっ?えーーー!!リーヴェル兄上?」
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