婚約騒動編
83 私はみんなとお家に帰ります
私が目を覚ましたのは、千歌子ちゃんの刑が執行された後だった。
私は、お別れの言葉を言うこともできないまま、千歌子ちゃんが遠いところに島流しとなったと聞いて言葉を失っていた。
だけど、千歌子ちゃんの犯してしまった事の大きさから考えると、死罪にならなかったことがせめてもの救いだったように思う。
だって、死んでしまえばそれで終わりだけど、生きていればきっといいことがあると思えるから。
その後、ポーションで怪我は治ったけど、体力が戻るのに数日掛かってしまった私は、大公さんが用意してくれた一室で体を休めることになった。
私が休んでいる間も、ヴェインさんやアーくん、かっちゃん達が、忙しそうに働いているのを見て、何か手伝えないかと思ったけど、動けない体では手伝いようがなかった。
だけど、王宮の外に沢山の病気の人がいると聞いた私は、ベッドの上でキュアポーションを大量に製造し始めた。
作ったそれを、ヴェインさんに言って街の人に使ってもらえるようにお願いしたのだ。
ヴェインさんは、ちょっとだけ困った顔をしたけど、私の意思を汲んでくれた。
「はぁ。シズは、自分のことも、もう少し気遣ってもいいと思うぞ?でも、シズのそう言う周りに優しくしようとする心をとてもいいと思うが……」
そう言って、私が作ったキュアポーションを街の人に配りに行こうとしてくれた。
だけど、アーくんと野上君にとても怒られてしまった。
「シズ!!兄様!!いくらなんでも、あれを無償で配るなんて馬鹿なことは止めてください!!」
「そうだぞ?こういう時ではあるが、物の価値は正しくあってなんぼだぞ?」
そんな私達を見かねた大公さんが助け舟を出してくれたのだ。
「それなら、こちらで買い取らせていただきます」
そう言って、お金を払ってくれたのだ。
私は、そんなつもりでキュアポーションを用意したわけではないので、受け取らないと言ったら、大公さんにも怒られてしまった。
そんな訳で、思わぬ収入を得てしまった私は、オマケだと言って無理やりポーションもセットにしたという経緯もあったけど、みんなが良くしてくれたお陰で早々に体力も戻りフェールズ王国に帰ることになったのだ。
本当は、国の復興もお手伝いしたかったけど、ヴェインさんとアーくんに止められてしまった。
国で心配するみんなに早く元気な顔を見せるようにと。そして、復興はベルディアーノ王国の民がすべき問題だと。
今回の救出に当たり、お店を利用してくれたお客さん達の力もあり、早く駆けつけることが出来たと教えてくれたのだ。その事を知ってみんなが、私を思ってくれたことがとても嬉しかった。
こうして、私達は家に帰ることとなった。
ベルディアーノ王国だけど、大公さんが主導となり復興がされた。
今回のこともあり、王政は廃止されることとなるそうだ。
民主政の体制を取り、国をより良いものにしていくと大公さんは言っていた。
そして、大公さんから、今回の召喚について正式に謝罪があった。
だけど、今回の騒動で半数以上のクラスメイトたちがこの世を去ったと聞いた時は、どう言っていいのか分からずにいた私に、生き残ったみんなが言ったのだ。
「ショックかと思うけど、俺はアイツラの自業自得だと思う。与えられた力に溺れて……。気にするなって言っても、気にすると思うけど、香澄は香澄の思うようにしたらいいと思うよ」
そう言ってくれたことに私は、少しだけ心が軽くなったのは確かだった。
みんなは、このままベルディアーノ王国に残るのだという。
大公さんから、元の世界に戻す方法がないと聞いたみんなは、その事を既に覚悟していたみたいで、脱出劇の際に親しくなった大公さんのこと助けるって言って、これからの国の復興に力を貸すと笑って言っていた。
元の世界にいた時は、みんなと話すことなんて無かったけど、こっちの世界に来て少しだけだったけど、みんなと話せてよかったと私は思ったよ。
私は、ベルディアーノ王国に残るみんなと別れる時に勇気を出して言っていた。
「あっ、あの!!元の世界ではみんなと話せなかったけど、ここでみんなと話せてよかった!その……、何か困ったことがあったら言ってね。私で出来ることがあれば協力するから!!」
そう言うと、みんなは顔を合わせてから言ってくれた。
「ありがとう!!香澄ともっと早くちゃんと話せればよかった……。お前と話せてよかったよ」
「香澄さん、ありがとう!!あなたも頑張ってね!!」
悲しいことや辛いことがあったけど、こうして一連の騒動は幕を閉じたのだった。
だけど、フェールズ王国に戻った後にあんな騒動に巻き込まれるだなんてこの時は思ってもいなかったよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます