11 私と騎士兄弟
ドガガガガァァァァァ!!!!
ガラガラガラ!!
ガシャン!!
バキバキバキ!!
ゴゴゴゴゴゴォォォッ!!!!!
自分でやっておいてなんだけど、ものすごい轟音と共に、私のマイホームが半分にカチ割れていた。
右手を手刀の形で振り下ろした体制で、自ら引き起こした大惨事に冷や汗が滝のように流れていた。
変態覗き魔の男は、体を捻ることで辛うじて私の手刀を避けていたけど、その顔は真っ青になっていたのが見えた。
そして、瓦礫とかしたマイホームの破片でも当たったのだろう、彼の頬から血が薄っすらと流れていた。
床にぶっ刺さっていた、手刀を抜いて誤魔化すように吹けもしない口笛を吹いて誤魔化そうとしたけど無理だった。
だけど、青い顔をした変態覗き魔の男は、必死にそんな私のことをフォローにならないフォローで慰めようとしてくれた。
「……、おっ俺が悪かった。そうだよな、年頃の女の子が裸を見られたらこうなるのは、ふっ、フツウだよな?アークもそう思うだろう?」
そう言って、アークと呼ばれた男に向かって、何かを合図するように何度も片目を瞑っていた。
「ええ、そうですね……。って、なるわけ無いでしょうが!!!なんですか、何なんですか!!普通じゃないですよ!武器や魔法を一切使わずに、しかも片手で家屋を半分に割って、更には地面を抉るなんて普通じゃないですよ!!」
「ちょっ!!アーク!!おまっ!!」
「兄様!!甘い顔しても駄目です。ここは事実を言うべき場面です。もし、あの手刀が、兄様に当たっていたら、今頃兄様は挽き肉になっていたんですよ!!」
アークと呼ばれた男に言われたことを考えただろう、変態覗き魔の男の顔面は蒼白となっていた。
だけど、きっとこの男はいい人間なのだと思う。変態覗き魔だけど。
だって、顔面蒼白状態でも私のことなんとかフォローしてくれようと必死になってくれたのだから。
「いや、ほら。火事場の何とかってやつだよ……。恥ずかしさから、思わぬ力が出たとかいう……」
うん。全然まったくフォローされた感じがしないけどね。
はぁ、もうなんだかどうでも良くなってきたよ。
うん。そうだね。今のことできっと記憶も曖昧になってるはずだし、肯定してくれたら許そう。
「はぁ。変態覗き魔の人。今の衝撃でさっき見たことは忘れてしまいましたよね?」
私がそう言うと、変態覗き魔の男は一瞬何かを考えてから言った。
「変態覗き魔の人?……、あっ、俺のことか!ああ、ああ、今のすごい衝撃で君の裸を見てしまったことは忘れてしまったぞ!!」
おっと、全然忘れてないみたいだね。
私は、右手を握り、無言で振りかぶっていた。
それを見た、変態覗き魔の男は慌てて言い直した。
「何もわからない!!何も見ていないし、ここはどこで俺は誰だっけ?!ほら、何もわからないぞ!!」
「はぁ、それならいいです。で、どうして我が家に不法侵入したんですか?というか、あなた方は何処のどちら様ですか?」
本題に入る前にものすごく疲れてしまった私は、男のミエミエの嘘を受け入れて話を進めることにしたのだった。
私の疲れた様子を見て、変態覗き魔の男は申し訳無さそうな表情をした後に、佇まいを正して私に言ったのだ。
「色々とすまない。俺は、ヴェイン・ラズロという。フェールズ王国で騎士団に所属している。そこにいるのは、俺の弟で、アグローヴェ・ラズロだ。俺たち二人は、騎士団の演習中にちょっとしたトラブルで、ここに転移してきたんだ」
「フェールズ王国?トラブルで転移?」
ヴェインと名乗った男の言っていることが理解出来ずにいると、アグローヴェだと教えられた男が更に説明してくれた。
「僕が騎士団の演習に参加することになって、兄様がそれに付き添ってくれたんです。演習の内容は、時間内に罠を掻い潜り目的地にたどり着くというものでした。兄様は、顔も性格も頭も良くて、武術も優れている最高の兄様だけど、ただ1つ大きな欠点あります。それは極度の方向音痴です。兄様に先導されて、僕たちはいつの間にか演習区域から外れていたようで、トラップ魔法にかかって、何処とも知らない場所に転送されてしまいました。後は、貴方の御存知の通りです」
極度の方向音痴……。それはご愁傷様です。でも、それよりも彼の言ったトラップ魔法のほうが気になった。それって、もしかして私の作ったスクロールみたいな効果なのかな?
気になった私は、アグローヴェに聞いてみることにした。
「さっき、転送されたってことだけど、それって転送先は……」
「ランダムです。なので、僕たちはここが何処なのかを知りません。ご迷惑ついでに聞きますが、ここは一体何処なんですか?」
そっか、ランダムなんだ。ということは、私の作ったスクロールって結構希少なものかも知れない。千歌子ちゃんに上げたのは、たしか全部で10個だったはず。でも、一緒に遊んだ時に、8個は使っていたはず。
それで、この前千歌子ちゃんが、残り一個になったから、また欲しいと言っていたから、私に使ったもので最後なはず。
だったら、今後この場所に誰かが来る確率は低い。
そう考えると、少しだけ安心した。だって、また誰かがここに来てしまったら私のせっかく築いた安息の地がめちゃくちゃになってしまうもの。
そこまで考えて、現在絶賛めちゃくちゃになっているマイホームを思い出してしまった。
「あああ!!我が家が!!我が家がめちゃくちゃに!!なんてことなの」
そう言って、悲しみから私は膝をついていた。
「おい、僕の話を聞いているのか?ここはどこなんだ?」
横で、何か言っている声は聞こえてきたけど、今はそれどころじゃないわ。このままじゃゆっくり夕飯も食べられないし、眠ることも出来ない。
それに、さっきの騒動でせっかくお風呂に入ったのに土埃とかで汚れてしまった。
なんだか疲労感が半端なかったけど、大事な我が家をこのままにはしておけないと、私は家主のスキルを施行することにした。
ステータス画面から、家主を選ぶといくつかのスキルが表示された。その中に表示されているロードを選んだ。
このスキルは、マイホームの状態を保存した状態に戻すことのできる便利なスキルだ。最後にセーブしたのが昨日の昼間で良かった。もし、家に手を加えた後にセーブせずに半壊状態になったら目も当てられない。
まぁ、その時はその時でまた新しく作り直すけどね。
でも、今はロードするだけで済んで本当に良かったよ。
ロードを使って家を戻した私は、急に疲れてしまった。お腹だって空いているし、お風呂にも入り直したい。
だけど、急に現れた他人の存在に、気が付かないうちに気を張っていたみたいで、もう限界みたい。
段々と意識が遠くなって、落ちるように眠ってしまっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます