閑話(ルイ視点)
「クラストよ、そなたの領地に大きな魔力の歪みがおこったと知らせが入った。先代の愛し子様が亡くなられてもうずいぶんたつ。次代の愛し子様が我が国に現れたのやもしれん。調査に行ってまいれ。」
伯父である国王の命令で俺、クラスト・ルイ・アンダーソンは例年よりも早く自分の領地に戻ってきた。
領地に戻りすぐに魔力のゆがんだ正確な場所を調べさせた。すると、魔力の歪みが起きたのは、魔の森という強力な魔物が住む森ということが分かった。俺は急いで旅支度をして、魔の森の近くの町マルセルに向かった。伯父上が後から何人か向かわせるといっていたけど、まぁ言伝を執事に頼んでおいたから大丈夫だろう。誰が来るかは大体予想できるしな。
マルセルに到着してすぐに冒険者ギルドに向かった。俺は一応Aランクだが、Sランクの冒険者でもてこずるといわれている魔の森に土地勘のない俺が1人で行くのはさすがに自殺行為だ。
ギルド長に会う前に少しトラブルがあったが、ギルド長に魔の森の案内をしてくれる冒険者を紹介してもらえることになった。紹介される冒険者を一目見ておこうと、ギルド長にその冒険者の容姿を聞いてみたところ、ついさっき助けた人物だということが分かった。
その冒険者について聞いてみた。ギルド長いわく、その冒険者は1年前にフェンリルを連れてふらっと現れたそうだ。主に魔の森で依頼をこなし、わずか1年でAランクになったギルド創設以来の期待の星だという。しかも『死神』という物騒な二つ名持ち。
うん、興味がわいた。さっきは食堂にいたな。会いにいてみよう。
そう思い、食堂に向かった。
食堂で『死神』を見つけ、パーティーを組みたいというとどこか怒ったように立ち上がりギルド長室に向かった。
後ろをついていきながら改めて『死神』を見る。
細身の体。フードを深くかぶり、男とも女とも言えない声。そして‥‥。
ちらっと『死神』の隣を歩くフェンリルを見る。
何者なんだ?
ギルド長室でギルド長と俺『死神』の3人で俺の依頼について話を始めた。だが…‥‥
「ルイ、ギルド長、ごめん。私たちはその依頼を受けることはできない。」
断られた…‥‥。報酬が足りなかったのかと思い、報酬金額を上げたがそういう問題じゃないといわれた。カナデはこの話はもう終わりだと、部屋を出ていこうとした。
扉に手をかけたところで、何か思い出したようにカナデが振り向いた。
「もし見つけたいとし子があなたの保護を求めていなかったらどうするの?」
その後も、大切な人がいたら? と、聞いてきた。俺はやけに愛し子を気にかけるな。と思いながらも正直に事耐えた。
「連れていくのが決まりだからどんなことがあっても必ず連れていくよ。抵抗したら、多少手荒くはなるが…。」
王命だから仕方がない。
と言いかけて、急に部屋の気温が下がったのに気が付いた。何事かと思いあたりを見渡すと、カナデの魔力が乱れて部屋の気温を下げていることが分かった。
一体あの体のどこにこんな量の魔力があるんだ!
そう思わせるほどにカナデの体から魔力が漏れていた。
「いい加減にして! あなたたちは愛し子を何だと思ってるの? ただの国を発展させる道具としか思ってないの?」
俺とギルド長は呆然と扉を見ていた。あの後カナデは、怒りを爆発させて契約獣とともに出て行ってしまった。
「・・・・・・ギルド長、カナデはいったい何者なのですか?」
「俺にもわからねぇ。あいつはひょっこり現れたんだ。田舎から出てきたこと以外、なぜあんな魔力を持っているのかも、なぜ上位種のフェンリルと契約を結んでいるのかもわからねぇんだ。秘密裏にうちの奴らに探らせても何にも出て来やしねぇ。」
驚いた‥‥。この人が探っても何もわからないことがあるなど‥‥‥。
だが、もっと興味がわいた。カナデを追っていたら何かあるかもしれない。
「ギルド長、カナデが泊っている宿を教えてください。」
「わりいがそれもわからねぇ。だがよく依頼で魔の森に行ってっから魔の森に行けば会えるんじゃねぇか?」
魔の森か・・・・。行ってみるか。
「ありがとうございます。それじゃあ俺はこれで。」
「十分気をつけろよ、クラスト。」
部屋を出ようとしたとき、声をかけられた。振り返ると、真剣な顔をしたギルド長がこちらを見ていた。
「俺でもてこずるところだ。」
あぁ、この人にはかなわない。俺は一言も魔の森に行くとは言っていないのに。
「肝に銘じておきます。叔父上。」
そして今度こそ部屋をあとにした。
≸一方その頃アンダーソン邸≸
ルイが魔の森に行こうとしている頃、アンダーソン邸の前で執事らしき人とフードを深くかぶった3人組が何やら真剣な会話をしていた。
「クラストが単身で魔の森に行っただ~~~~~~~?」
「嘘でしょ!? 単身魔の森って・・・・・。クラストはバカなの? バカなのよね!!」
「まぁまぁ。2人とも落ち着いて。セバスチャン、クラストは先に魔の森に行っていて僕たちはそれを追えばいいんだね?」
「はい。旦那様は先に行っておくからマルセルに来てくれとのことでした。」
「わかったよ。じゃあ僕たちはマルセルに向かうよ。ほら、2人とも出発するよ。」
フードを被った3人は足早にマルセルに向かった。
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