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ズタボロになりながらも、やっとのことで魔王を倒すことができた。魔王を倒してほっと息をついた。
ドスッ!
背中に衝撃とともに鋭い痛みが走った。痛みで動けない体に鞭打って後ろを振り返ると、そこには私の血で濡れた短剣を持った王女が勝ち誇った笑みをたたえて立っていた。
「やっと・・・・やっと化け物を2匹倒せましたわ! わたくしたちがこの国どころか、この世界の人間ですらないあなたをいつまでも生かしておくとお思いでしたの? 魔王が倒された今、あなたなど用済みですわ!」
その言葉を聞いて、私の中は絶望よりもやっぱりなという感情がしめていた。今までの扱いから、きっと魔王を倒したら私は消されるだろうと予感はしていた。でも、もしもという感情を捨てきれなかった。その分ショックではある。それと同時に、怒りや虚しさもわいてくる。
高笑いしながら去っていく彼らを、ぼやけていく視界で見ながら私はこう願った。もし神というものが存在するのなら、私をこんな目に合わせた彼らや、この世界のすべてのものに耐え難い苦しみを!・・・・・そしてできることなら、私と同じような人を出さないように、異世界から召喚する技術をすべて消してほしいな。あとは、つぎこそは、穏やかに,くらした、い。
そこまで願い、私の意識は闇の中に完全に引きずり込まれた。
意識を失う直前、誰かに頭を優しく撫でられた気がした。
―――――――――――――――――――――
奏の意識がなくなる直前、光の中から女性が現れた。その女性は、奏の頭を優しくなでた。すると奏でが負っていた傷がすべて、跡形もなくふさがっていった。
「迎えに来るのが遅くなってすまぬ。よく耐えてくれたの。次目覚めたときは、お主は妾の世界におる。今はゆっくり眠るがよい。向こうでまた会おう。我が愛し子よ。」
女性は、奏の頭を優しく撫でながら言った。奏を見つめる眼差しは、優しさや慈しみで満たされていた。そして女性は片手をあげおもむろに振ると、奏の体は光に包まれて消えた。
奏が消えたことを確認すると女性は立ち上がり、王女たちが去っていったほうをにらみつけた。そこには、奏に向けていた優しさや慈しみといった感情は一切なかった。あるのは純粋な怒気と殺意のみだった。そしてゆっくりと口を開いた。
「おのれ、……おのれおのれおのれおのれ! よくも、よくも妾の大切な愛し子をあのような目に合わせたな!! 奏が願うまでもない! 奏をあのような目に合わせた奴ら全員、死ぬほうがましだと思うほどの苦痛をくれてやる!!!」
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