第4話 対話という湿度
化学物質過敏症の診断を受けて仕事を辞め、自宅療養を始めて早8年。
今では家族以外の人と会う機会はほぼない。
発症後の数年間は、外に出ようと努力もしてみた。
が、約束をしていても当日の朝に「やっぱり今日は無理」と、お断りしなければならないことが続き…相手の都合も考えたら、約束することにどんどん恐怖を感じるように。
そんな状態でも、「それでもいい」と、会う約束をしてくれる人がいる。
「外に出られないなら会いに行く」と、言ってくれる人がいる。
「当日無理なら仕方ないし、途中で体調が悪くなったら帰るから」と、寄り添ってくれる人がいる。
どれだけ救われていることか。
なんて有り難いんだろう。
外の世界から遠ざかった生活をしている今。
外の世界の話を聞かせてもらえるのは、とても有意義で、とても楽しい。
なにより、対話という湿度に安心する。
家で独り過ごす時間は、湿度が足りない。
喉に潤いがなくなり、とても息苦しくなることがある。
決して部屋が乾燥している所為ではなく(笑)
対話という湿度を感じると、いつもの日常に戻った時の乾燥具合が半端ない。
当たり前のことなんて何ひとつない。
自分で出来ることには限りがある。
今あるものがどれほど尊いか。
失うのは本当に一瞬なのだ。
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