魔族の街の道具屋さん
くるっくる
第1話 ゴブリン少女の一日
ここは剣も魔法もある世界
この世界には人族、魔族、妖精族、竜族と言う種族が居た
その中で魔族と人族の間に戦争が起こった
その争いは複数の国に渡り、妖精族等の他種族も巻き込んだ非常に大きなものとなった
だがそれは既に過去の出来事であり、現在では和解し互いに交流をしている
舞台は魔王が治める魔族の国デュコウ
その中にある街、マーテンとなる
「ふあぁ~」
一人の少女が目を覚ます
少女の名はピウリ
身長1m20cm程
緑色の肌に薄橙色のような髪色
くりっとした丸い目をしたゴブリンだ
場所は自分が持つ店の二階
店はマーテンの中でも中央からやや東側に位置する
「今日は…曇りかあ」
窓から外を眺める
所々晴れ間は見えるものの、曇天と言っていいだろう
まだまだ早朝なので人通りは少ない
取り敢えず昨日の内に作っておいたクラムルを口に放り込む
クラムルは芋の様な野菜を蒸して潰して
他の野菜や肉を練りこんだ団子だ
作られてから一日経過していたので、
パサパサした食感に口の中の水分が奪われる
思いきり咀嚼し、水で流し込んで簡単な朝食を終えた
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身だしなみを整えて1階にある店舗部分に降りると、
そこには既に人影があった
「おはよーフリドー君」
「おはようッス、店長」
このオーガの青年はフリドー
身長はピウリの倍近くある白い髪と浅黒い肌を持つ大男だ
オーガと言う種族は得てして厳つい顔つきをしているのだが、彼に関しては垂れ目でとても
気が強そうには見えない
実際心優しい青年であるとピウリは思う
店員であるフリドーは既に商品の陳列を始めていた
「もっと遅く来ても大丈夫なのにー、フリドー君は真面目だねー」
その言葉にフリドーは作業をしながら
「こうやって何かしてる方がおちつくッスから」
と返事する
やっぱりそこが戦闘種族のオーガだから
体を動かすのが好きなのかなー
等とピウリは考える
そこからはピウリも加わり、二人で陳列を行う
フリドーに営業中の看板を外に出してもらい、ピウリ雑貨店は営業開始となった
……
来客は多少あったが、実際に購入していった客はこれまでの間に2組、どちらも冒険者だ
冒険者は元々魔族の国には存在しない制度だったが、人族の国との交流の中で
魔族の国にも浸透してきた文化の一つだ
ギルドが彼らを斡旋する、要するに便利屋、何でも屋であり、
冒険者は危険な魔獣の退治から街のゴミ拾い、ペット探しまで
幅広く何でもこなすその日暮らしの労働者である
1組目はゴブリン二人とコボルト一人の組み合わせ、戦闘よりも採集や納品をメインにしているパーティーかなと思う
2組目はオーガとリザードマン、こちらは魔獣退治や護衛を得意としていそうだけど…
どちらの組も依頼か何かに納品するのか、ハーブや工芸品を購入していった
納品の依頼の場合、意外と店を当たると該当の品が見つかる事があるので、
街中で見つけられそうなものに関しては片っ端から当たると言うのは冒険者でも基本になっている
転売みたいなもので、購入費を考えるとそこまで美味しい訳ではないが、
依頼をこなした実績にもなるし、早く終えられるのは大きなメリットだ
ピウリはこれまでそういう冒険者を何十何百と見てきた
おっといけない、そろそろ昼になる
「それじゃフリドー君、アタシは昼食とってから何かめぼしいものが無いか見てくるから、
お店よろしくね」
ピウリの言葉にフリドーが返事をする
「おまかせくださいッス」
フリドーに見送られてピウリは店を出た
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